紅葉こうえふ)” の例文
紅葉こうえふの「青葡萄あをぶだう」とかいふのが、多分、コレラの話だつたらう。La Motte といふ人の短篇に、日本のコレラを書いたのがある。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
夏は、村ぢゆうが深い青葉につゝまれ、秋はあざやかな紅葉こうえふそまりました。紅葉もみぢがちつてうつくしく色づいた実が、玉をつづつてゐるのを見るのは、どんなにたのしかつたでせう。
(新字旧仮名) / 土田耕平(著)
麻布あざぶ古川ふるかは芝山内しばさんないの裏手近く其の名も赤羽川あかばねがはと名付けられるやうになると、山内さんないの樹木と五重塔ごぢゆうのたうそびゆるふもとめぐつて舟揖しうしふの便を与ふるのみか、紅葉こうえふの頃は四条派しでうはの絵にあるやうな景色を見せる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
先生此逆境に立ちて、隻手羅曼ロマン主義の頽瀾たいらんを支へ、孤節こせつ紅葉こうえふ山人の衣鉢を守る。轗軻かんか不遇の情、独往大歩の意、ともに相見するにへたりと言ふ可し。
「鏡花全集」目録開口 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
一葉いちえふ落ちて紅葉こうえふは枯れ
偏奇館吟草 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
紅葉こうえふの句いまだ古人霊妙の機を会せざるは、独りその談林調だんりんてうたるが故のみにもあらざるべし。この人の文を見るも楚々そそたる落墨ただちに松を成すの妙はあらず。
十千万堂日録とちまんだうにちろく一月二十五日の記に、紅葉こうえふ諸弟子しよでし芝蘭簿しらんぼの記入を試むくだりあり。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)