祇園祭ぎおんまつり)” の例文
春蚕はるこが済む頃は、やがて土地では、祇園祭ぎおんまつりの季節を迎える。この町で養蚕をしない家は、指折るほどしか無い。寺院おてら僧侶ぼうさんすらそれを一年の主なる収入に数える。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
京都の壬生みぶ念仏や牛祭の記は見た事もあるがそれも我々の如き実地見ぬ者にはまだ分らぬことが多い。葵祭あおいまつり祇園祭ぎおんまつりなどは陳腐な故でもあらうがかへつて細しく書いた者を見ぬ。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
思い出せば、古いことじゃが、そなたが十六で、われらが二十はたちの秋じゃったが、祇園祭ぎおんまつりの折に、河原の掛小屋で二人一緒に、連舞つれまいを舞うたことを、よもや忘れはしやるまいなあ。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
折からこの地の祇園祭ぎおんまつり樽神輿たるみこしかついだ子供や大供の群が目抜きの通りを練っていた。
高原 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)