矍鑠くわくしやく)” の例文
が、誰よりも一番似つかはしかつたのはあの老来なほ矍鑠くわくしやくとした端正な鍵屋の隠居、神原直造であつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
しかしその矍鑠くわくしやくとした気力と、つや/\しい顔の輝きとの少しも変らないのには全く驚きますよ。
緩端えんばた平伏へいふくしたる齋藤茂頼、齡七十に近けれども、猶ほ矍鑠くわくしやくとしてすこやかなる老武者おいむしや、右の鬢先より頬をかすめたる向疵むかふきずに、栗毛くりげ琵琶びはもゝ叩いて物語りし昔の武功忍ばれ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
手紙には衰へたりとのらす伯父けふ相見れば矍鑠くわくしやくとして
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
彼にはあらゆることが矍鑠くわくしやくとした老船頭だつた父親がいつの間にか耄碌もうろくしてよろよろ歩くやうになつたこと、一番上の姉娘が或る時ひどい熱を出してから頭が変になつていまだに「八文」であること
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)