相生橋あいおいばし)” の例文
茶屋揚屋あげやの軒に余って、土足の泥波を店へどっと……津波の余残なごりは太左衛門橋、戒橋えびすばし相生橋あいおいばしあふれかかり、畳屋町、笠屋町、玉屋町を横筋に渦巻き落ちる。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
生ていたころの木魚もくぎょのおじいさんと三人、のどかな海に対して碁を打ち暮した。島には木橋の相生橋あいおいばしが懸っていたばかりで、橋の上を通る人は寥々りょうりょうとしていた。
避難の舟が多いので、もし初めの大きい舟に乗ったならば、相生橋あいおいばしでつかえて動けなくなるところであったが、舟が小さいお蔭で波の荒い沖へ出ることができた。
地異印象記 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
風船は月島つきしまを横切って、お台場の方角へ、ランチは、相生橋あいおいばしをくぐって品川湾へ。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
鏡花さんが水がきらいで私の住んでいた佃島つくだじまうちが、海潚つなみに襲われたとき、ほどたってからとても渡舟わたしはいけないからと、やっとあの長い相生橋あいおいばしを渡って来てくださったことを思出したり
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
木橋もくきょう相生橋あいおいばしに潮がさしてくると、座敷ごと浮きあがって見えて、この家だけが、新佃島しま全体ででもあるような感じに、庭の芝草までが青んで生々してくる、大川口おおかわぐちの水ぎわに近い家の初夏だった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)