いわばわれわれの存在の疑問記号フラーゲツアイヘンである「白き画布」は、今新しき香りを放ちつつ、われわれの前に架けられている。
絵画の不安 (新字新仮名) / 中井正一(著)
画布は、すでに死膚の白さに彩られているはずである。なぜならそこには、生のただ一つのしるしである生そのものへの疑問記号フラーゲツアイヘンを失っているからである。
絵画の不安 (新字新仮名) / 中井正一(著)
存在と実存在との隔たりの隙虚すきまに画布ならびにエクランはしずかにすべり入るとも考えられる。そこでは白い画布ならびにエクランは一つの疑問記号フラーゲツアイヘンである。
芸術の人間学的考察 (新字新仮名) / 中井正一(著)
われわれの前にまずある白い画布は、実にいまだ問われざる一つの疑問記号フラーゲツアイヘンである。われわれが今ここに在りながらしかも真に在らざる不安、それが画布の寂しき白さである。
絵画の不安 (新字新仮名) / 中井正一(著)