ほと)” の例文
旭川のほとりへ鷹狩りに出た光政が、珍しいくらい大猟で、雁を馬につけるほど獲って帰城した、奥へ入ろうとしたときである、ふとうしろの方で
備前名弓伝 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あとを任せて、玄徳は逃げのびたが、やがて南のほう——長坂坡ちょうはんはほとりにいたると、ここに一陣の伏兵あって
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石水と云えば、彼には、茫洋ぼうようとした石狩川の流れが見えて来る。そのほとりにあるあぶらぎった処女地も浮んで来る。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
しかして三年この池のほとりに二人は安楽に暮した。しかるに一日夫は狩猟かりに出かけたり家に帰えらなかった。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
泉水のほとりにも、数奇を凝らした四阿あづまやの中にも、モーニングやフロックを着た紳士や、華美な裾模様を着た夫人や令嬢が、三々伍々打ち集うてゐるのだつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
村はずれで十文字峠への道と分れ、左を取って三国峠に向う。白樺の木立に沿うたり稲田のほとりを歩いたりして、十五、六町行くと河原に出て千曲川を渡った。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
利根川のほとり鹿島の宿で、土用明けのざんざ降りを食って、三日も無言の行を続けたことを思いだしたが、あの黒ずんだ、色彩の無い、常陸の国の川沿いの丘の宿に比べると
雨の宿 (新字新仮名) / 岩本素白(著)
とある蓮池はすいけほとりにある料亭りょうていで、川魚料理を食べたり、そこからまた程遠くもない山地へ分け入って、微雨のなかを湖に舟を浮かべたり、中世紀の古色を帯びた洋画のように
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そのうちに、一枚の菩提樹リンデンの葉チューリップの上に落つるを見、更に歩むうち、今度は広々とした池に出会いて、そのほとりに咲く撫子カーネーションを見るに、みな垂れ下がるほどおおいなるはなびらを持てり。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
くろはこは、おとこをいれてなかめられました。それから、はるあめは、この墓地ぼちにもりそそぎました。はかほとりにあった木々きぎは、いくたびも若芽わかめをふきました。
銀のつえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
然るべき家も見当らないので、大きな沼のほとりの百姓家に泊めてもらった。すると真夜中にときの声だ。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふもとにも、芝生の上にも、泉水のほとりにも、数奇すきを凝らした四阿あずまやの中にも、モーニングやフロックを着た紳士や、華美なすそ模様を着た夫人や令嬢が、三々伍々さんさんごご打ちつどうているのだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そして彼らについて出て見ると、園の蓄水池ちくすいちほとり、涼しげな楊柳ようりゅうの木蔭に、むしろをのべ、酒壺さかつぼを備え、かごには肉の料理やら果物くだものを盛って、例の与太もン二、三十が恐れかしこんで待っている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むなしく帰って来ると、ご門のほとりに、異なものを見かけました
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一年余の工を積んで、漳河しょうがほとりに銅雀台どうじゃくだいを築いた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)