甲虫かぶとむし)” の例文
旧字:甲蟲
と、最後に第五斥候隊と、その救援に向った二ヶ隊のものが、奇怪な甲虫かぶとむしのような人間位の大きさの火星人を十人つれて帰艇して来た。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ありの性急な活動を、歩きながら踊ってるように見える足長蜘蛛ぐもを、横っ飛びにね回るいなごを、重々しいしかもせかせかした甲虫かぶとむし
濡れ光った甲虫かぶとむしのような人影が、厚ぼったく彼を取りかこんだ。ギラギラするのは槍であろう。ひとりの武者がその中から問いつめた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お縁に来てみると、甲虫かぶとむしの箱のわきに、ブリキやセルロイドで作つた小さな車のおもちやを、真奈まなちやんがドッサリ持つて来てゐました。
かぶと虫 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
「そこから甲虫かぶとむしを通しておろすんだ。紐ののばせるだけな。——だが、気をつけてつかんでいる紐をはなさんようにするんだぞ」
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
ポーセがせっかくえて、水をかけた小さなももの木になめくじをたけておいたり、ポーセのくつ甲虫かぶとむしって、二月ふたつきもそれをかくしておいたりしました。
手紙 四 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
蜂や、蠅や、甲虫かぶとむしや、蝶が、ねむくなるやうな微かな音をたてゝ彼方此方の花から花へ飛びまはつてゐました。
「しかしだね、ここに一匹の緑色の甲虫かぶとむしが、なにか用たしに出掛けるとするね。その途中でいきなりこんな目に逢う。こいつの恐怖が思いやられるなあ。」
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
道具屋は画かきの前で手拭てぬぐひかぶつて猫の真似をしたり、四つひになつて甲虫かぶとむしの真似をしたりした。そして西山氏が腹の底から笑ひ崩れるのを待つてゐた。
危険になると、豪猪やまあらしは毛を逆立て、甲虫かぶとむしは死んだまねをし、昔の近衛兵は方陣を作るが、この男は笑い出した。
袋撓刀ふくろしないのこととか、背中へ甲虫かぶとむしを入れられたこととか、暴れ馬のこととか、お化粧をされたのを忘れて、そのまま帰って土蔵へ入れられたこととか、——なんだ」
女は同じ物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それは、甲虫かぶとむしの如き額をした・鼻の長い男の横顔をはっきり現していた。顔の肉に当る部分は絶妙の桃色で、帽子(大きなカラマク人の帽子)、ひげ、眉毛は青がかった灰色。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
昼の鳥とはまったく違っている夜鳥ナイトバードの怪しい叫び声、めくら滅法界めっぽうかいに飛んでくる大きい甲虫かぶとむしの唸り声、ことにこれらの小さい虫の合奏曲コーラスが突然やんで半分しかきこえない時には
こいつときたら、何かもう、甲虫かぶとむし黄金虫こがねむしでも見つけようものなら、たちまち眼玉をキョロキョロさせましてね、直ぐにそれを追かけまわして、もう夢中になってしまうんですよ。
なにかのはずみで、大きな馬鹿ばか甲虫かぶとむしがまごついて飛んできて彼にぶつかろうものなら、このあわれな男は魔女のまじないにうたれたのかと思って、あやうく死ぬほどになった。
蝶蛾ちょうが甲虫かぶとむし類のいちばんたくさんにんでいる城山しろやまの中をあちこちと長い日を暮らした。
花物語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
下段右側には動的表現界の代表者、こうし、犬、猫、鷹、甲虫かぶとむし、鰐、紅鶴等の神々が列座し、左側には静的表現界の代表者、月、星、山、川、木、草、石等の神々が居流れております。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おそらく、私たちを乗せた巨大な甲虫かぶとむしは、今は一千五百尺以上の山中を驀進ばくしんしている。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
枝に甲虫かぶとむしでもいるのであろうか、上向きながら木の幹を、指で叩いているのであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ドイツ人って、あのいつものフィルゼルとかいう甲虫かぶとむしか。」と甲谷はいった。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ほかは、幅も底も測知はかりしられぬ、山の中を、時々すっと火の筋がひらめいて通る……角に松明たいまつくくった牛かと思う、稲妻ではない、甲虫かぶとむしが月を浴びて飛ぶのか、土地神とちのかみ蝋燭ろうそくけて歩行あるくらしい。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
桑畑の縁にある芍薬しゃくやくの赤い芽を、小さい甲虫かぶとむしの触角がしきりに撫でている。
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
毒壺の中では一つの玉虫と甲虫かぶとむしが苦悶してゐます。
サンニー・サイド・ハウス (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
すると、いつのにか、かれの身辺をねらって、じりじりとはいよってきたふたりの武士ぶし——それはまえの甲虫かぶとむしだ、いきなり飛びついて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひつくりかへされた甲虫かぶとむしは、仰向けになつたまゝ、六本の太い足をモゴ/\動かすばかりで、どうしても起きられません。
かぶと虫 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
彼は新しい種類の、世にまだ知られていない二枚貝を発見したのだが、そのうえまた、ジュピターの助けを借りて一匹の甲虫かぶとむしを追いつめて捕えたのだ。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
すると、二少年をとりかこんでいるあの甲虫かぶとむしともペンギン鳥ともつかない怪物こそ、これぞ外ならぬ火星人なのだ!
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ぴき甲虫かぶとむしが、夜だかの咽喉にはいって、ひどくもがきました。よだかはすぐそれをみこみましたが、その時何だかせなかがぞっとしたように思いました。
よだかの星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
歯朶しだ、毛蕊花、毒人参どくにんじん鋸草のこぎりそう、じきたりす、丈高い雑草、淡緑のラシャのような広い葉がある斑点のついた大きな植物、蜥蜴とかげ甲虫かぶとむし、足の早い臆病おくびょう昆虫こんちゅうなど、様々なものを呼び集め
その間に静止している巨大な甲虫かぶとむし、華麗な蝶々、実物大の鳩、雛子ひよっこ木兎みみずく……。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それともあの甲虫かぶとむしのフィルゼルに、——いや、畜生、死ね、死ね。——
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
みると、それはさいわいにして狼ではなかったが、針金頭巾はりがねずきん小具足こぐそくで、甲虫かぶとむしみたいに身をかためたふたりの兵。手には短槍たんそうを引っさげている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武夫は勇敢にも、巨大甲虫かぶとむしが落ちたと思われる草叢くさむらのなかへ、猛然と躍りこんだ。お美代が止めるいとまもなかった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼の健康について二こと三こと尋ねてから、私は、なにを言っていいかわからなかったので、G——中尉ちゅういからもう例の甲虫かぶとむしを返してもらったかどうかと尋ねた。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
初めは鉛筆のさきで突いたほどの黒い点でしたが、だん/\大きくなつて豆粒ほどになり、甲虫かぶとむしほどになり、それから急にムクムクツと尨犬むくいぬのやうに大きくなつて
文化村を襲つた子ども (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
汽車はもう、しずかにうごいていたのです。カムパネルラは、車室の天井てんじょうを、あちこち見ていました。その一つのあかりに黒い甲虫かぶとむしがとまってその影が大きく天井にうつっていたのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そう思ってお前は甲虫かぶとむしの角をつかまえたわけだな。いい考えだ。
こいつ、からだはちいさいが、一すじなわではいかないぞ——とみた甲虫かぶとむしは、やにわに短槍たんそうをおっ取って、閃々せんせんと突いて突いて、突きまくってくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なるほど、生物の異常成長! すると、魔の森において発見された亀のように大きい甲虫かぶとむしもそれなのですね」
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
箱の中には、まつ黒いかめの子のやうな、大きな甲虫かぶとむしが五匹も入つて、モゴモゴ動いてゐたからです。
かぶと虫 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
汽車はもう、しずかにうごいていたのです。カムパネルラは、車室の天井てんじょうを、あちこち見ていました。その一つのあかりに黒い甲虫かぶとむしがとまって、そのかげが大きく天井てんじょうにうつっていたのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
甲虫かぶとむしのように、手をついた男を見ると、かつて見かけたことのない、町人とも武士ともつかぬひとりの侏儒こびとだ。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
“……人間大の怪しき甲虫かぶとむしの形をした怪物およそ十匹にとりかこまれた。わが携帯用無電機を眼がけて、拳をふりあげて来る。無電機をこわすつもりか……”
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「僕だけじゃないんです。大きくなったものは全部小さくなりましたよ。ほら、石亀のように大きかった甲虫かぶとむしがありましたネ。あれもこの通り小さくなりましたよ」
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
物見隊ものみたいの兵らしく、みな槍をもち、銃をもち、甲虫かぶとむしみたいに武装したのが、ひとしく、かの女のもつ処女のうつくしさに眼をられて、しばらくは、ただ見まもっていた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてその鉄板は、横へ長いものが重なり合っていると見え、甲虫かぶとむしのからだのようであった。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一匹の甲虫かぶとむしが、大きな岩に押しつぶされりゃ、もうどうすることも出来ないのだからな、アカグマ国はその大きな岩でわれわれの祖国イネ国は、所詮しょせん甲虫にしか過ぎなかったんだ
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いいつけた用事をしてくれる甲虫かぶとむしや、知らないうちに告げ口をするすずめや、歌をうたうのが上手じょうずな柱などは、はじめのうちこそふしぎふしぎと手をうって、ほめたたえたけれども、それから時がたつと
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)