甦生そせい)” の例文
陽春のある黄昏たそがれである。しかし、万物甦生そせいに乱舞するこの世の春も、ただこの部屋をだけは訪れるのを忘れたかのように見える。
黄昏の告白 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
そうして新しい甦生そせいの道へこまの頭を向け直させるような指導者としての役目をつとめるのがまさにこの定座であるように思われるのである。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして私は完全にせよ、不完全にせよ、甦生そせいしていたろうか。復活していたろうか。神によって罪の根から切り放された約束を与えられたろうか。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
大嘗の中臣天神寿詞なかとみのあまつかみのよごとは、飲食の料としてばかり、天つ水の由来を説いているが、日のみ子甦生そせいの呪詞の中に、産湯を灌ぐ儀式を述べる段があったのであろう。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
そして星の輝く夜のうちに、甦生そせいした自然の賛歌と回癒かいゆした魂の感謝の歌とが、新たに起こってきた。
葡萄大谷ぶどうおおやの別天地は生気溌溂はつらつたる緑葉に埋もれ、人々は甦生そせいの力に溢れ、あるいは鉱山の発掘に、または武術の鍛練に、勤むべきが普通つねであったのに、今年はそれが不可能できなかった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そういう時にはこれがたちまちにして原始民時代の武器として甦生そせいするという可能性も備えているのである。
ステッキ (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
私は古代皇妃の出自が水界に在って、水神の女であることならびに、その聖職が、天子即位甦生そせいを意味する禊ぎの奉仕にあったことを中心として、この長論を完了しようとしているのである。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
しかしいわゆる「夢判断」はフロイドの多年の研究によって今までとはちがった意味をもって甦生そせい
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
古いことがぼつぼつ復活する当代であるから、もしかすると、どこかでまたこの「鴫突き」の古いスポーツが新しい時代の色彩を帯びて甦生そせいするようなことがないとも云われないであろう。
鴫突き (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)