じし)” の例文
小藤次の期待は反対になって、雲霧は、暴れじしみたいに迫った。子を取り上げた小藤次は、かえって、その子が邪魔になって来た。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
癪に障る、野暮だ、と云う道学者に、ぐッと首根ッ子をおさえられて、(早瀬氏はこれがために、ちと手負じしでごわりましてな。)
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その時にカゴサカの王はクヌギに登つて御覽になると、大きな怒りじしが出てそのクヌギを掘つてカゴサカの王をいました。
おりから今度は仔牛ほどもある、荒れ狂った一頭の手負いじしが、氷の川を一刎ね刎ねて武兵衛目懸けて襲って来た。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
手負いじしに最後のとどめを刺す深い陥穽おとしあなを用意して。その陥穽の底にはドキドキする剣を何本も植えつけて。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もちろん、赤痣あかあざの若者も、吠えたり暴れたり、抵抗はしたが、二十余人の捕手に会ってはどうしようもない。手負いじしのように東渓山の麓へと曳きずられていった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、小屋から手負いじしのように、一人の男が飛び出して来た。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
思わず、彼が左のひじで、眼をこすったせつな、これも手負いじしとなった藤五が
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)