シカ)” の例文
世間も当然、シカあるべきものとして怪しまなかつたに違ひない。併しそこに、世間及び彼のとつた大誤算のハジきはじめがあつたのである。
市村羽左衛門論 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
シカノミナラズ、夫人蔡氏サイシノ岳父、蔡大臣ノ都ノ邸ヘ向ッテ、連年、生辰綱ショウシンコウ(誕生祝いの金品)ヲ贈ルコト実ニ巨額ニノボル。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ねこ、(中略)人家ジンカチヒサキケモノヒトトコロナリ。温柔ヲンジウニシテヤスク、マタネズミトラフレバフ。シカレドモ竊盗セツタウセイアリ。カタチトラ二尺ニシヤクラズ。(下略げりやく
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕「シカリ。其ノ一団ハ何ヲナセルヤ」
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
若し シカあらば
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
即、我が文化の悠遠なることは、天つのりとに於いても、シカ第何次かの変化の末を存してゐるものと思はれるのである。
日本文学の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
シカシテ、ヤガテ退城ノ後ハ、信長公ノ御成オナリアツテ、御見物ナサルベシ、其意ヲ存ジテ、退去ヲ前ニ、端々ハシバシ普請フシン掃除サウヂヲ申シツケ、表ニハ弓鉄砲ノ兵具、ソノカズ懸並カケナラベ、内ニハ資財雑具ヲ改メ
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
而も、その詠歌と伝へるものを見れば、かくの如く優に、シカ、人をして愁ひしむる、幽かなる思ひを持つたお人と、昔びとは伝へて来たのであつた。
日本文学の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
此岡に 草刈る小子ワクゴシカな刈りそね。ありつゝも 君が来まさむ御馬草ミマクサにせむ——万葉巻七
八人の舞人がてんに執つた阿礼木(貞観儀式)は、ハヤくとりものの枝を、直ちにシカ呼ぶまで変つて居たのか、其ともまだ、此古い祭りには、古風なみあれ木が宮中に樹てられ
幣束から旗さし物へ (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
島の宮の雁の子と言ふのは、名は雁と称へてゐるが、名だけをシカ呼んだのであらう。
万葉集研究 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
市村氏の為の死の面は、外に考へメグラすまでもない。シカ過ぎ経た彼の一生に似て、独り静かに輝いて、響き過ぐるカナでの如き近代劇——新劇団を組織することなどが、最適切な方法ではないだらうか。
市村羽左衛門論 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)