そう)” の例文
陛下に仁慈の御心がなかったか。御愛憎があったか。断じてそうではない——たしかに輔弼ほひつせめである。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そうじゃねえよ、いろ/\深いわけがあって身を投げようとする処を助けたんだ、妙じゃアねえか、両人ふたりを助けて船へ乗せると、互に顔を見合わせて、オヤ万年町のお嬢さんか
田に入るとて水をく頃は、高八寸のナイヤガラが出来て、蛙の声にまぎらわしい音を立てる。玉川に行くかわりに子供はこゝで浴びる。「蘆の芽や田に入る水も隅田川」そうだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
けど秋山少尉は考えておきますと、そういうだけで、何遍話をしてもうんといわない。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
以前もとそうではない……宮様の御在おいであそばす所は只今の博物館の所で、今日も門は残つて居ります、十月の二日には三十六坊を宮様が御廻りあそばす、其時は山同心が先に立つて、下に/\の制止声で
下谷練塀小路 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
西北の空が真暗になって、甲州の空の根方のみみょう黄朱おうしゅなすった様になる時は、屹度何か出て来る。すでに明治四十一年の春の暮、成人おとな握掌大にぎりこぶしほどの素晴しい雹が降った時もそうだった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そうだ。若主人は二年の兵役にとられて、去年の十二月初やっと帰って来たのであった。一人息子だったので、彼を兵役に出したあと、五十を越した主人は分外に働かねばならなかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)