)” の例文
夫人はこの時笑ってしまえば宜かったのに、うもう行き兼ねた。女中が先ず笑ったのである。それが先刻の仇討のように思えた。
或良人の惨敗 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「ええうよ、詳しくね。……でもよく助けて上げたわね。……妾、お君ちゃんと親友なのよ。……お礼心よ、泊っていらっしゃい」
人を呪わば (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
△「おりう云ったっけが間に合わねえから、此の玉子焼にさわらの照焼は紙を敷いて、手拭に包み、猪口ちょこを二つばかりごまかしてこう」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
漸々だんだん毛が抜け変って赤くなります。」といった。私は、好い加減なうそをいうのだと思って、別に「うか。」とも答えなかった。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
吸物のふたを取ると走りの松蕈まつたけで、かうばしい匂がぷんと鼻にこたへる。給持きうぢ役僧やくそうは『如何どうだ』といつた風に眼で笑つて、してつた。
茸の香 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
うぢやろ、然うぢやろ。」とおうなはまたうなずいたが、ただうであらうではなく、まさうなくてはかなはぬと言つたやうな語気であつた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
何だべえせえ、自分のとこでなかつたら具合ぐあえが悪かんべえが? だらハア、おらア酒え飲むのさ邪魔さねえば、何方どつちでもいどら。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「そうでがすよ。」と、七兵衛は首肯うなずいて、「お前様めえさまよく知っていなさるね。這奴こいつ、若旦那を釣出つりだそうと思ったって、うは行かねえ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「あッ、うだった。危い危い! しかし此儘このまま見殺みごろしが出来るもんじゃない。何とか、おい番頭さん、何とかしなければ——」
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
心理の説明なぞの場合が殊にうで、断定的に言いきってしまうと、たちまち真実をつかみ損ねたような疑いに落ちこんでしまう。
文章の一形式 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
自由とか解放とか、うした世界に憧憬して、煙のような夢の如な天地を想見して、遂に温かい父母の膝下を去ったのです。
職業の苦痛 (新字新仮名) / 若杉鳥子(著)
わざとうした運命に身を潜めたのかも知れないのだが、何んにしても其恩には、充分報じなければ成らないのだ。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
真面目まじめに勉強し、学校に出ても真面目に教師のいうことを注意して聞くようにすれば、矢鱈やたらに苦しまなくとも、普通ならやってゆかれることと思う。
私の経過した学生時代 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つてう言い出したことのない弥吉を、児太郎は自身にひきあてて、悲しげに打棄うちすてるような調子でしりぞけた。
お小姓児太郎 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「おいね、う言うて家の親爺も、のこ/\と出掛けて行ったのやとこと。もう帰りそうなもんじゃがのう。」
恭三の父 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
わたくしをして、う思わせるだけでも、銀座や上野あたりの広いカフエーに長年働いている女給などに比較したなら、お雪の如きは正直とも醇朴じゅんぼくとも言える。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
う一時の、間に合せの妥協によつての平和が何時まで続かう。一時の平和を求めて後々まで苦しむより、まだ、死によつて強く自己の道に生きる方がどの位、ましだか知れない。
日記より (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
『おい、う感動するな。平気でれ。身体からださはるから。』
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
「夜だからう云ふ気がしたのだよ。」
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「急ぐと兎角無理になって、奥さんの里から女中丈け補助して貰ったりします。うなると悲惨なものです。家庭で頭が上りません」
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「そりゃあうだろう、惚れてるからな」嘲笑あざわらうように鼻を鳴らした。「女を占めようと思ったら、決して此方こっちで惚れちゃあ不可いけねえ」
隠亡堀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
梅「何うもねえ、うで、何うもねえまア、何うもねえ、元は私が悪いばかりで中根さんも然ういう事になり、罪作りを仕ましたねえ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ところが、聞いて見ると、うで無い。ただ此処ここ浮世離うきよばなれがしてさみしいのが気に入つたので、何処どこにも行かないで居るのだと云ふ。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「でも、忠一もその時に云っていましたよ。市郎君は色男だ、柳屋の女が大層チヤホヤしていたと……。ねえ、うでしょう。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
自分のとこでなかつたら具合が惡かんべえが? 然だらハア、俺ア酒え飮むのさ邪魔さねえば、何方どつちでも可いどら。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「わたしが彼処あそこへ行ってしまったら、既うそれきりになって帰って来ないような気がしますもの。もしうだったらお父さまはどう成さるおつもり——。」
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
で、職業としての目的を達し得た点において、あらゆる職業は平等で、優劣なぞのある道理はない。う云う意味で言えば。車夫も大工も同じく優劣はない訳である。
まさかにうとも思へない。然し心の一部分で、私は全く混乱した。けれども私は言葉をつづけた。
狼園 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
鼻は低く、口は大きく、あごは二重に見えるので有ったが、如何にも其眼元に愛嬌があふれていた。うして云う事る事、如才無く、総てがきびきびとして気が利いていた。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
久しく机の上に置いてあった一篇の草稿は若しお雪の心がわたくしの方に向けられなかったなら、——少くともう云う気がしなかったなら、既に裂き棄てられていたに違いない。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「……束髪の女装をした奴で、名は樫田武平とね、うだろう?」
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ナカナカうは言えないよ。この鉄瓶と銅壷を見ても分るが、如何にも調和が好い。何方どっちにも苦情はないようだ。円満な夫婦らしい。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
町「いゝえ、少しも痛みはしません、なんの貴方、長い旅に是しきの事で御厄介ごやっかいになりましては、思ったことが遂げられませぬ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
では森下雨村氏といえども気遅ればかりを標榜し(或いはうでは無いかもしれぬが)創作をしないという事は、いささか当を得ないようである。
いや、う六十になるが忘れないとさ、此の人は又ういふよ、其れから此方こっち、都にもひなにも、其れだけの美女を見ないツて。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
の女がここのかどくぐった所を見ると、妾は何日いつでも押掛おしかけて来て、頭の毛を一本一本引ッこ抜いてるから、う思っておいでなさい。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『嘘なもんですか。始終しよつちゆう那麽妙な咳をしてゐたぢやありませんか。……加藤さんが言つてるんですもの。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
うすると何うしても坐って居らなければならぬ文学者と云う者ほど、詰らない稼業はなくなってしまう。
さうしてういふ多彩にして溌剌たる世界には多分に没交渉な生活を営んでゐるが、それを充分知つてゐる筈の雨宮紅庵が、臆する気配も見せずういふことを切りだしたので吃驚びつくりした。
雨宮紅庵 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「おれはあの老人から止められたほど変になっていたのであろうか。すくなくともう思わせるだけのものが、おれの目つきにあらわれていたであろうか。」と思うと、ふしぎにの塔の上にくると
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
うして同じ境遇という点に於て、急に同情の念を生じて来た。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「いや、うじゃない。樫田武平かしだぶへい、あの男に違いない!」
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大抵の家庭はうである。又然うであるのが本当だ。殊に子煩悩な山下さんは何かにつけて子供の自慢話をする。課員は心得たものだ。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
舁夫「ウーンうか、担いで貰おう、担いでおくんねえ、船橋まで幾らで担いでくか知らねえが、担いでッて貰おう、サア担げ」
僕もうしようかと思っていた矢先に、名古屋の綿業家を中心とし、それへいろいろの職業人の加わった上海視察団が出来
赤げっと 支那あちこち (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もっとも、烏にならば、何時なんどきなりとも返して上げよう——とう申して笑ふんでございます。それでも、うしても返しません。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
万一これを洩らしたら同志の者どもが押し寄せて来て、主人をはじめ一家内をみなごろしにするからう思えと、さんざん嚇かして行ったんですとさ。
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一体私は頭の悪い方で——今でもうだが——それに不勉強の方であったから、学校での信用も次第と無くなり、いに予科二年の時落第という運命に立ち至った。
私の経過した学生時代 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
郷里くに言葉の『だすか。』と『左樣さいでございますか。』とは、第一長さが違ふ。二人には『で』に許り力が入つて、兎角『さいで、ございますか。』と二つに切れる。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
僕の意味する日本的なることがういふ新らたな発展に結びつかうとしてゐるために、特に貴兄のやうな外国文学に堪能な士から日本人をききたいといふ僕の微意も分つていただけるでせう。