ぜん)” の例文
九月一日の東京ぜんと大焼けに焼けた妻が拙者をのろうて、別嬪べっぴんでも醜婦でも、一切の物、わが夫に見られたらたちまち破れおわれと詛うた。
が、畢竟ひつけうそれもまた名人上手とかいふ風な古來の形しきが當ぜん作り出すかたとらはれた觀念くわんねんと見られぬ事もない。
こしらえて、王様ぜんかまえこんでいなくちゃなるまい
コーカサスの禿鷹 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
倭文子はかつぜんとして、何事かを悟った様に思った。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
瞬間にカツぜんと音がした。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
幸運こううん悲運ひうんのけじめは勿論もちろんあるとしても、つ者がつにはかならず當ぜん由がある。蹴落けおとされて憐憫れんびんつ如き心かけなら、はじめから如何なる勝負せうふにもたゝかひにも出る資格しかくはないわけだ。