しかる)” の例文
向年より五々の暦数に及んで日域に一人の善童出生し不習に諸道に達し顕然たるべし、しかるに東西雲焼し枯木不時の花さき諸人の頭にクルスを
島原の乱雑記 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
しかるに是等学芸の士は、平民に対してちとの同情ありしにあらず、平民の為に吟哦ぎんがせし事あるものにあらず、平民の為に嚮導きやうだうせし事あるものにあらず
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
しかるに澤の井は其後漸くつきかさなり今はつゝむに包まれず或時あるとき母に向ひはづかしながら徳太郎ぎみ御胤おんたね宿やどしまゐらせ御内意ごないい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかるにふと物音のたようであるから何心なく頭を上げると、自分から四五間離れたところに人がたって居たのである。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しかるに今ではこの私が、マリア姫から夫れに似た無情つれない態度を見せられている。私もカスピナも不幸なのだ。不幸な女と不幸な男、互に慰め合うきではないか。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
故に女は男に比るにおろかにて、目前もくぜんなるしかるべきことをも知らず、又人の誹るべき事をも弁えず、我夫我子の災と成るべきことをも知らず、とがもなき人をうらみいか呪詛のろ
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかるに、何から思いついたのやら、ふと曲亭馬琴きょくていばきんの小説『夢想兵衛胡蝶物語むそうべえこちょうものがたり』を種本たねほんにして、原作の紙鳶たこを飛行機に改め、「彼はどこへでも飛んで行く。」という題をつけ
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかるにお房は、彼の財布さいふにはそこが無いものと思ツて、追續おツつぎ/\/\預算以外の支出を要求して、米屋八百屋の借をはらはせたり、家賃やちんの滯をめさせたり、まとまツて幾らといふ烏金からすがねくちまで拂はせた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
立退たちのきまづ西濱さして急ぎゆけり此西濱と云はみなとにて九州第一の大湊おほみなとなり四國中國上方筋かみがたすぢへの大船はいづれも此西濱より出すとなりしかるに加納屋利兵衞方にて此度このたび天神丸てんじんまると名付し大船を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかるに清十郎が沓脱くつぬぎに腰をかけて奥のかたの嫁入支度を見て
「歌念仏」を読みて (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
玉之助たまのすけなづ掌中たなそこの玉といつくしみそだてけるしかるに妻は産後の肥立ひだちあし荏苒ぶら/\わづらひしが秋の末に至りては追々疲勞ひらうつひ泉下せんかの客とはなりけり嘉傳次の悲歎ひたんは更なりをさなきものを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)