)” の例文
越前ゑちぜん武生たけふの、わびしい旅宿やどの、ゆきうもれたのきはなれて、二ちやうばかりもすゝんだとき吹雪ふゞき行惱ゆきなやみながら、わたしは——おもひました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
くはかついで遺跡ゐせきさぐりにあるき、貝塚かひづかどろだらけにつてり、その掘出ほりだしたる土器どき破片はへん背負せおひ、うしていへかへつて井戸端ゐどばたあらふ。
稱道するんですね、文藝全體から見てう云ふ傾向も無論なくてはならん。兎に角自分の信ずる處を遠慮なく發揮されるがいゝです。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
東京の女中! 郷里くにで考へた時は何ともいへぬ華やかな樂しいものであつたに、……ういへば自分はまだ手紙も一本郷里へ出さぬ。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ればといいこれを幕府の方に渡せば、殺さぬまでもマア嫌疑けんぎの筋があるとか取調べるかどがあるとかいっ取敢とりあえず牢には入れるだろう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
世に生業なりはひも数多く候に、優き優き御心根にもふさはしからぬやうの道に御入おんい被成候なされさふらふまでに、世間は鬼々おにおにしく御前様おんまへさまを苦め申候まをしさふらふか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼とても芸妓げいしやと飲む酒のうまい事は知つて居やう、しかし一度でもう云ふ場所へ足を向けた事の無いのは友人が皆不思議がつて居る。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
眼もうだが、顏にも姿にも下町したまちにほいがあツて、語調ことばつきにしろ取廻とりまはしにしろ身ごなしにしろ表情にしろ、氣は利いてゐるが下卑げびでゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
何が辛いといつても一番辛いことはお父さんや春子に彼女が惡者の如く思はれることです。う思はれても僕のこの身に罰が當ります。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
鍋町なべちやううらはう御座ございますかと見返みかへればいな鍋町なべちやうではなし、本銀町ほんしろかねちやうなりといふ、らばとばかりいだまた一町いつちやうまがりませうかとへば
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
らば』とドードてう嚴格げんかくつて立上たちあがり、『この會議くわいぎ延期えんきされんことを動議どうぎします。けだし、もつとはや有効いうかう治療ちれう方法はうはふが——』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
其休むる時間け全く其事を忘れ尽して他の事を打楽しむ癖を生じたる如くなるも余には仲々其真似出来ず「らば」とて夫婦に分れを
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
なく答えはいたしまするものゝ、その慌てゝ居ります様子は直ぐ知れます、そわ/\と致してちっとも落著おちついては居ません。
るを、家名断絶も覚悟して、今日、刃傷の禁犯を敢ていたした迄には、よくよく、忍びがたき仔細もあればこそと思われまする。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なせし者なり江戸表へ御供致せば惡事あくじ露顯ろけんいたすべしればたちま罪科ざいくわに行はれんが此儀は如何あらんと云ふに吉兵衞は答へて予が守護を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いえうぢやないのです。』ミハイル、アウエリヤヌヰチはさら云直いひなほす。『の、きみ財産ざいさん總計そうけい何位どのくらゐふのをうかゞうのさ。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「然うさね。美人だけれど少し鼻が低い代りに額が高いと確信しているんだろう。もなくてあゝ白粉をコテ/\塗る理由わけはない」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
渠は悪を悪とするを知る、れども悪の悪なるが故にみづから制止することは能はず、能はざるに非ず、するの意志を有せざるなり。
心機妙変を論ず (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
これなりとは聞召きこしめしたりけれど、いきおい既に定まりて、削奪の議を取る者のみ充満みちみちたりければ、高巍こうぎの説も用いられてみぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
よしうでないにせい、まへのは最早もう絶滅だめぢゃ、いや、絶滅だめ同樣どうやうぢゃ、はなれてんでござって、貴孃こなたのまゝにならぬによって。
或は足下は言はん、先生はる波瀾に富んだ性行の人ではなく、世に平凡なる偉人と言はれし通り頗る常識の發達せる平凡なる人であつたと。
こんな容易しい言語が世の中に又と有らうと思へぬ。さう容易しくては複雑な思想は言顕いひあらはせまいと思ふ人もあらうが、ところがうでない。
エスペラントの話 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
それに私なんかう見えても温順おとなしいんだから、鉄火てつかな真似なんかとても柄にないの。ほんとうに温順しい花魁おいらんだつて、みんながう言ふわよ。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
木曾は愈〻勢ひに乘りて、明日あすにも都に押寄せんず風評ふうひやう、平家の人々は今は居ながらける心地もなく、りとて敵に向つて死する力もなし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
たまへ、露西亜ロシヤ帝国政府の無道擅制ぶだうせんせいは、露西亜国民の敵ではありませんか、ども独り露西亜政府のみでは無いです、各国政府の政策といへど
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
此一条は戯場の作り狂言のようなる事なれども、にあらず、我が知音中村何某なにがし、其の時は実方みのかたの藩中に在る時の事にて、近辺故現に其の事を
(新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
れば現時の米国海軍——其軍人は左迄さまで勇壮ならざるべし。多くの雇兵より成れる陸軍は敢て恐るゝに足らざるべし。
警戒すべき日本 (新字旧仮名) / 押川春浪(著)
人の世にあるや、とある夕、何事もあらざりしを、久しくえ忘れぬやうに、美しう思ふことあるものなるが、かの歸路の景色、またたぐひなりき。
うかなあ。俺は少し、底にう空色を帯びたやうな赤いつぼみがあつたと思つたのに。それを一つだけ欲しかつたのさ」
ユダ橄欖かんらんの林を歩める時、悪魔彼に云ひけるは、「イエスを祭司のをさたちにわたせ。すれば三十枚の銀子ぎんすを得べし。」
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
逍遙子はシエクスピイヤが作の傑出ならざるものにるたぐひありといひ、又衆戲曲家の作に然るたぐひ多しといふ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「六郎さんが丈夫ですと、今年は一緒に大学へ来るんでした。一昨日の晩停車場ステーションでお母様がう云つて泣かれました。」と、坐ると行也いきなり、その事を云出す。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
うすると私達も、いつかは茸のやうな這麼こんなほのかな風味に舌鼓したづゝみを打つ興味に感じなくなつてしまふかも知れぬ。
茸の香 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
長い間世間の上に喘ぎながら今日まで何も掴み得なかつたみのるの心は、いつともなく臆病になつてゐて、うしてその心の上にもう疲勞の影が射してゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
うだ。私がこの頃来求め苦み、尋ね喘ぎてゐた道の方向を示してくれるのはこの詞よりほかにない。
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
故に此理性道理と云ふ字義の内には、天理天道など云ふ意は含まぬ事と知る可し。て一方の「ネチュラル・ラウ」と云ふは、理法と譯す。直譯なれば天然法律の義なり。
尚白箚記 (旧字旧仮名) / 西周(著)
「私どももやはりうですよ。をぢさんにご厄介やつかいになつたんだからよく御礼をおつしやいよ。」
ザボンの実る木のもとに (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
「オ、うだ、如何したんだね米ちやん、もつと此方に出ておいでよ、寒いだらう、其處は。」
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
ただ昔から馬琴ばきん其他の、作物は多く讀んだが、詰りが明窓淨几の人で無くつて兵馬倥偬へいばこうそう成長ひとゝなつた方のだから自分でも文士などゝ任じては居らぬし、世間も大かたうだらう。
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)
「爾曹もしめしいならば罪なかるべしれど今われら見ゆと言いしに因りて爾曹の罪はのこれり。」
野ざらし (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
巴里の三越と云つてよい大きなマガザンのルウヴルの三階などにならべられて居るので、まで珍しくも無いであらうが、白足袋を穿いて草履ざうりで歩く足附が野蠻に見えるらしい。
巴里にて (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ない調子と言ふよりは、已むを得ないと言つた口調で顫へ上がる友二郎をかへりみます。
疑うということすら、かかる矛盾的自己同一から起るのである。無論、私はいわゆる経験論者の如く知識は外からというのでもない。らばといって、単に内からというのでもない。
デカルト哲学について (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
わが常に求むる真実を過ちの対象に見出したるは、一面より言えば不幸なるがごとくなれど、必ずしもらで、過ちを変じて光あるものとなすべき向上の努力こそわが切なる願いに候。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
このような絵の直接御用命者にはる○○な方々もある。西洋人もある。間接の手を経て外国へも続々行くらしい。某ホテルのボーイ頭なぞはその仲介に立って大金をめていると聞く。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
その矢さきへ、この相談を持ち掛けられたのであるから、長三郎はよろこんで即座に承諾した。彼はぜひ一緒に連れて行ってくれと答えると、伝兵衛はもこそと云うようにうなずいた。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
三六三て我をいづくにも連れゆけといへば、いとうれしげに点頭うなづきをる。
人跡到らぬキトウス山の陰から来るのだ。もあろう。今こそ駅逓には冬も氷らぬ清水しみずが山から引かれてあるが、まだ其等の設備もなかった頃、翁の灌水は夏はもとより冬も此斗満川でやったのだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ああエルサレム、エルサレム、予言者たちを殺し、つかわされたる人々を石にて撃つ者よ、牝鶏めんどりのそのひなを翼の下に集むるごとく、我なんじの子らを集めんとしこと幾度ぞや、れど、汝らは好まざりき
駈込み訴え (新字新仮名) / 太宰治(著)
ああ若人よ、神明にるべき物を獻ずるは、 425
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)