海盤車ひとで)” の例文
夫を奪おうとした憎むべきリメイに断乎としてヘルリスを挑むべく、海盤車ひとでに襲いかかる大蛸おおだこの様な猛烈さで、彼女はア・バイの中に闖入ちんにゅうした。
南島譚:02 夫婦 (新字新仮名) / 中島敦(著)
きっと犯人の古典クラシック好みから、ロドマンの円弾まるだま海盤車ひとでのような白煙を上げて炸裂さくれつするだろうよ
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
京子は、ボイルのような、羅衣うすものを着ていた。しかし、その簡単な衣裳は、却って彼女の美に新鮮を与え青色の模様の下に、躍動する雪肌は、深海の海盤車ひとでのように、やわらかであった。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
あいちやんは不器用ぶきようつきで赤子あかごりました、それはめう格好かくかうをしたちひさな動物どうぶつで、れがいてるまゝに其腕そのうであしみんそとすと、『恰度ちやうど海盤車ひとでのやうだ』とあいちやんはおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
この動物では先づ(一)海膽うに海盤車ひとで類に四五種ある。サラシンがセイロン島附近で觀察したところによれば、一つの海膽の表面に三毛から六毛位の大さの點々が一千乃至二千個も光つてゐた。
光る生物 (旧字旧仮名) / 神田左京(著)
所が、海盤車ひとでと思った相手は、意外なことにしびえいであった。一掴みと躍りかかった大蛸はたちまち手足を烈しく刺されて退却せねばならなかった。
南島譚:02 夫婦 (新字新仮名) / 中島敦(著)
どんなむごいことが、この全然人気のない原っぱの中で行われたか……ただ、彼女の真白い足の裏が、靄に溶け込んだ蒼白い月の光りの中に、まるで海底の海盤車ひとでのようにいぎたなく突き出されて見え
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
それには海盤車ひとで化物ばけものとでも思われるような生気があった。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)