さら)” の例文
その落いた魚屋やつの襟印を見て帳面に『一円五十銭……茂兵衛』とか何とか私共一流の走書きに附込んだやつさらうように引っ担いで走り出て行きます。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
チンピラのさらい生活、立ちん坊の働き具合まで加えると……大きく云えば人間世界……小さく見れば全東京のあらゆる商売振りを代表したものが
「人の頭の中のものをスーッとさらって行く……不思議な……なつかしい青年……近頃流行のシークとかスマートとかいう言葉は、こんな青年を形容する言葉ではあるまいか」
怪青年モセイ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
別段、惚れているという訳ではないけれども、あの可愛い桃割髪ももわれの娘が弐千円のお金と一所に、あの凄者すごものらしい青年に見す見す引っさらわれて行くのを、黙って見ている訳にはドウしても行かなかった。
芝居狂冒険 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
無学文盲の親友にさらわれてしまった。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)