沸然ふつぜん)” の例文
もとより直訴は天下のご法度はっと沸然ふつぜんとしてわきたったのは当然なことです。声が飛び、人が飛んで、訴人はたちまち近侍の者たちが高手小手。
いま密林に抱かれ大自然にささやかれ、野性が沸然ふつぜんよみがえって来たのである。それをヤンが見てあざけるようにいった。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
福之助は、いかにも沸然ふつぜんとしました。伯父が殺された當夜、此家に居なかつたといふ、上等過ぎるほど上等の不在證明アリバイが、この名家のすゑの中年男をカツとさした樣子です。
沸然ふつぜんと、彼の心は、つぶやいた。意地のない弟にも、腹が立ってくる。しかし、将平を見ても、その下の将文、将武を見ても、みなまだ、二十歳はたちそこそこの若者でしかない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)