河童かつぱ)” の例文
「あの人の目はきよろ/\してをつて、をかしいやうだ」とか、「河童かつぱのやうに、何であんなに髮の毛を延ばしてをるんだろ」
泡鳴五部作:01 発展 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
「それぢや訊くが、喜三郎が船から落ちた時、もう一度船に這ひ上がらうとした筈だ。河童かつぱと言はれた喜三郎が、そんなに手輕におぼれる筈はない」
奉公人がすぐにあの野郎を、ぐるぐる巻にふん縛つて、まるで生捕りました河童かつぱのやうに、寄つてたかつて二階から、引きずり下してしまやがつた。
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
私が八歳の幼時、春風が戸障子としやうじをゆすぶる日の黄昏たそがれ近くであつたが、戸口の障子を開けると、赤いひも甲掛草履かふがけざうり穿いたお河童かつぱの雪子が立つてゐた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
おさわは同じ船頭仲間の河童かつぱ大公だいこうと呼ばれてゐた、眼が円くて口が尖んがつた男の妹であつた。おさわは左の眼が髑髏のやうにへこんだ独眼であつた。
泥の雨 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
一體いつたいみづふものは、一雫ひとしづくなかにも河童かつぱ一個ひとつむとくにりますくらゐ、氣心きごころれないものです。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
がそのうちに、武助さんがぽかりと河童かつぱのやうに頭を出して、舟の方へぬきでを切つた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
この正本せいほんさへ引揚げてあれば、間貫一いくら地動波動じたばたしたつて『河童かつぱの皿に水のかわいた』
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
田村俊子たむらとしこ岡田八千代をかだやちよ與謝野晶子よさのあきこ等々とう/\みなふるはないうちに、たゞ一人ひとり時雨女史しぐれぢよしが、三宅みやけやす宇野千代うのちよ平林ひらばやしたいなどのわかひと以上いじやうに、お河童かつぱをんななか餓鬼大將がきだいしやうとして
五五 川には河童かつぱ多く住めり。猿が石川ことに多し。松崎村の川端の家にて、二代まで続けて河童の子をはらみたる者あり。生まれし子は斬り刻みて一升樽に入れ、土中に埋めたり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
明治の初年にわたくしは桜木天神の神楽殿に並んだ裏二階に下宿してゐたが、当時の薬師の縁日は猶頗殷盛であつた。わたくしは大蛇の見せもの、河童かつぱの見せものを覗いて見たことを記憶してゐる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
さんだんにうねりてみゆるお河童かつぱの髪ゆりていましかけりくるかな
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
河童かつぱ瘠馬やせうま
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
野天のてん藝人を一々立つて見た上、今度は足藝と河童かつぱ、ろくろ首に大蛇の鹽漬、といつた小屋掛の見世物を覗いて、一ときばかり後には、鳥娘の繪看板ゑかんばんの前に
河童かつぱの考証は柳田国男やなぎだくにを氏の山島民譚集さんたうみんたんしふに尽してゐる。御維新前ごゐしんぜん大根河岸だいこんがしの川にもやはり河童が住んでゐた。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
よる風呂ふろふき、炬燵こたつこひしきまどゐに、なつおよいだ河童かつぱの、くらけて、豆府とうふ沙汰さたがはじまる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
河童かつぱに見込まれないものでもあるめえ、惡いことは言はないから、さつさと家へ歸るが宜い——とね
船藏ふなぐらがついちかくつて、安宅丸あたかまる古跡こせきですからな。いや、ういへば、遠目鏡とほめがねつたで……あれ、ごろうじろ——と、河童かつぱ囘向院ゑかうゐん墓原はかばら惡戲いたづらをしてゐます。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
僕は船端ふなばたに立つたまま、鼠色に輝いた川の上を見渡し、確か広重ひろしげいてゐた河童かつぱのことを思ひ出した。河童は明治時代には、——少くとも「御維新ごゐしん」前後には大根河岸だいこんがしの川にさへ出没してゐた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「お、危ねえ。俺は河童かつぱの眞似は得手えてぢやねえから、飛込まれたら最後見殺しにしなきアならねえ」
かたともみづうみともえた……むし寂然せきぜんとしてしづんだいろは、おほいなる古沼ふるぬまか、千年ちとせ百年もゝとせものいはぬしづかなふちかとおもはれた圓山川まるやまがは川裾かはすそには——河童かつぱか、かはうそは?……などとかうものなら、はてね
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「今ではもう河童かつぱもゐないでせう。」
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「川なら大丈夫で。河童かつぱの申し子と言はれた若旦那ですよ、今に龍宮からお土産を持つて來ますぜ」
河童かつぱですか。」
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「——驚くでせう、近頃は主人の玄龍先生お近と親しくなつて、内儀の嫉妬やきもちは大變だつたさうですよ。あの二人の女は昔の朋輩ほうばいには違ひないが、どうせ水商賣の女河童かつぱで——」
調べて見るとお樂は房州生れの河童かつぱで、水で死ぬやうな女ではありません。
「死んだ七平なんぞと來た日にや、河童かつぱ見たいなもので」
河童かつぱを水に突落す奴もねえものだ」