沖天ちゅうてん)” の例文
国民の意気また沖天ちゅうてんの概があったが、この日本の大勝利は、異国人の周さんにまで、私たちの想像の及ばぬほど強い衝撃を与えていたのである。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
海がその蔵する無限のエネルギーに押し立てられて、沖天ちゅうてんいきおいを以て陸に向って押しよせる時は、あたかも陸を一呑ひとのみにするかと思わるるほどである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
戦いである以上、秀吉とて、実は、勝敗の帰結きけつは期し難いものを、われ勝てりと、士気すでに沖天ちゅうてん、希望の大道を“目にも見よ”と、民衆に見せ示していた。振わぬ領民のあるはずはない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沖天ちゅうてんの意気を以てわが家に駈け込み、かあちゃんこれだ、と得意満面、その勲章の小箱をそっとあけて女房に見せると、女房は冷たく、あら、勲五等じゃないの、せめて勲二等くらいでなくちゃねえ
トカトントン (新字新仮名) / 太宰治(著)