欵待もてなし)” の例文
彼は貴婦人のかたちふけりて、その欵待もてなしにとて携へ来つる双眼鏡を参らするをば気着かでゐたり。こは殿の仏蘭西フランスより持ち帰られし名器なるを、やうや取出とりいだしてすすめたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さてわれは姫にむかひてかたばかりの詞を掛けしに、その答いと優しく、他の親族の人々と我との間に、何の軒輊けんちするところもなき如し。こは此御館みたちに來てより、始ての欵待もてなしともいひつべし。
古式を重んずる欵待もてなしのありさまが、間もなくそこにひらけた。土器かわらけなぞを三宝の上に載せ、挨拶かたがたはいって来る髪の白いおばあさんの後ろからは、十六、七ばかりの孫娘が瓶子へいじを運んで来た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
欵待もてなし置て早々文藏方へいたり只今我等方へ御侍士一人御入にて斯樣々々かやう/\の御尋ねあり貴樣に後暗き事の有べき樣なけれど一おう申聞ると申せしに文藏は内心ないしんぎよつとなせしかども素知そしらぬ體にて其は一向心當りもなしと申を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)