おお)” の例文
(自分一人に、こんな人数を向けて——斬り破る見込みはない。斬り破っても、逃げおおせるものでない。潔く、捕えられた方がいい)
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
こと今日こんにちは鉄道も有り電信も有る世界にて警察の力をくゞおおせるとは到底とうてい出来ざる所にして、おそかれ早かれ露見して罰せらるゝは一つなり。
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「オオ。ヤ、えらい奴じゃ。よくやり居った。思いついて出たのもえらいが、つけおおせたとは、ハテ恐ろしい。女にしては恐ろしいほどの甲斐性者。シテ……」
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
また応永二十二年、北畠満雅阿射賀あさか城に拠りしを足利方の大将土岐持益囲んで水の手を留めた節も、満雅計りて白米を馬に掛けて沢山な水で洗うと見せ敵を欺きおおせた。
その中に、ゆうべ辛くも逃げおおせた児島三郎高徳も、そ知らぬ顔して交じっていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうも逃げおおせることは出来まいと、おどすように云うものもある。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
隠しおおせられるものではない。
おおせたのは、公宗の弟俊季としすえだけであった。公宗は、伯耆守長年に預けられ
この靴を逆さまにいて追う者の眼をごまかし無難に逃げおおせるという事よくあるやつで、『義経記』五の六章に、義経吉野を落る時、弁慶誰も命惜しくば靴をさかしまに履きて落ちたまえと勧め
辛くも内に入り、公事は勤めおおしたということである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)