杜松ひば)” の例文
竹のまだ青々した建仁寺垣のめぐらされた庭の隅には、松や杜松ひばまじって、ぶち入りの八重の椿つばきが落ちていて、山土のような地面に蒼苔あおごけが生えていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
手近の杜松ひばの枝などからむしり取って見ると、すぐに其処へ捨てようと云う気になれない。少くとも暫くの間は手すさびに指へ絡んでみたり掌中へまるめてみたりする。
茸をたずねる (新字新仮名) / 飯田蛇笏(著)
お作はこんもりした杜松ひばの陰を脱けて、湯殿の横からコークス殻を敷いた水口へ出た。障子の蔭からそっと台所をのぞくと、誰もいなかったが、台所の模様はいくらか変っていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そして板囲いのなかをあっちこっち歩いて見たり、杜松ひばなどの植わった廂合ひさしあいの狭いところへ入って、青いものの影を見せたりした。赤子はぽっかり目を開いて口を動かしていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)