晩霞ばんか)” の例文
わたしはよく小諸義塾の鮫島さめじま理学士や水彩画家丸山晩霞ばんか君と連れ立ち、学校の生徒等と一緒に千曲川の上流から下流の方までも旅行に出掛けた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
暗緑色の松と、晩霞ばんかの濃い紫と、この夕日の空の紅色こうしょくとは独り東京のみならず日本の風土特有の色彩である。
あしたうた女翠蓮めすいれんを送って、晩霞ばんか憲兵も逐電ちくてんすること
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
隣家の小楼はよく残暑の斜陽を遮るといえども晩霞ばんか暮靄ぼあいの美は猶此を樹頭に眺むべし。門外富家の喬木連って雲の如きあり。日午よく涼風を送り来ってしかも夜は月を隠さず。偏奇館まことに午睡を貪るによし。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)