新米しんまい)” の例文
「僕はこいつを知っている。この山内に野宿している新米しんまいの子持ち乞食だ。あの洋服を着せられているのは、こいつの子供なんだよ」
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
とその店の女中のうちで一ばんの新米しんまい、使いはしりをつとめていた眼のすずしい十五六歳の女の子に、そう言って元気をつけてやった。
狂言の神 (新字新仮名) / 太宰治(著)
眼を開いて見るとタッタ今噂をしていた柳井副院長が、新米しんまいらしい看護婦を二人従えて、ニコニコしながら近づいて来た。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もっともだれでも、いわば新米しんまいとしてそういう機会をつかまえるだけの心の落ちつきをもっているとは限りませんけれど。
(新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
古来多くの新米しんまい山姥やまうば、すなわちこれから自分の述べたいと思う山中の狂女の中には、何か今なお不明なる原因から、こういう錯覚を起こして、欣然きんぜんとして自ら進んで
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
清水君が一日せんを越す勘定になる。日を争ってまで招いてくれるのは嬉しかった。新米しんまいの僕は故参こさんの御機嫌を損じたくない。会社の帰りを清水君の新家庭へついて行った。
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おまけに、わたしのことを、友田が、こういう風に、いうとるということを聞きました——玉井金五郎の奴、このごろ、若松に来た新米しんまいの癖して、太い料簡の横道者おうどうもんじゃ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
おまけに極く新米しんまいの私は、そんな事に全然無知だつたので、少し訊ねて見たかつたのだが、相手の機嫌を幾らか損じたらしい際でもあり、傍にゐる島民巡警への顧慮も手傳つて
どうした訳かと聞いてみるとまだ新米しんまいだそうである。まだ新米にさえもならない自分の顔がその日どんなであったかは自分には分らない。疲れはしないかと三人から度々聞かれた。
ゴルフ随行記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
この生ける墓場の新米しんまいである雲霧は、初めのうちはそれを妙に思っていましたが、日が経つに従って、身をうごかすことも、考えることも嫌になって、まったく話をする意慾などは
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三十五万石の彦根へ行け、五十五万五千石の紀州へ行け、大阪へ出たら鴻池こうのいけ、住友——その他、この近国には江戸旗本の領地が多い、新米しんまいの胆吹出来星王国なんぞは見のがせ見のがせ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なんでも、校長になれない男先生の教師としての最後のつとめと、新米しんまいの女先生が苦労のしはじめを、このみさきの村の分教場でつとめるのだといううわさもあるが、うそかほんとかはわからない。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
彼等の方でも新米しんまいの周平を面白半分に引廻した。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
新米しんまい殿、ひと稽古たのむ」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おまけに今日の奴は知らない奴だったが、新米しんまいと見えて、矢鱈やたらに小面倒な文句ばかり並べやがったもんだからね。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
新米しんまいらしいお囃しのおばさんは、これもやっぱり酔っぱらっていて、猥褻わいせつに笑いながら、調子を合せた。
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おまけにごく新米しんまいの私は、そんな事に全然無知だったので、少し訊ねて見たかったのだが、相手の機嫌を幾らか損じたらしい際でもあり、傍にいる島民巡警への顧慮も手伝って
そうしているうちにいつのまにか一通りの新米しんまいファンになりおおせたようである。
映画時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
李逵もまた、新米しんまいの味方の一人など、ふり返ってもいなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でも、新米しんまいじゃろ」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
しかし、賊が発明したからと云って、警察がこれを利用して悪いという道理はありません。近年はわれわれのような新米しんまい警官でも、針金でドアをひらく技術を教えられているんですよ。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
若い、新米しんまいの主人に対する職工たちの侮辱と、冷罵れいばとを予期させられつつ……。
怪夢 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一目で新米しんまいとわかる身なりから同化しようとしたものだった。
声の波の形が整わぬので新米しんまいという事が分る。
窮理日記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
新米しんまいの赤井はうすきみ悪そうに、キョロキョロあたりを見まわしています。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
民蔵たみぞう民蔵、新米しんまいの民蔵はどうしたッ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うぬ。新米しんまいの卒の分際で」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
靄助もやすけぐらいな新米しんまいなんで。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)