さか)” の例文
お藤に素破抜すっぱぬかれると、万次郎はそれにさからう気力もなく、がっくり首を落して、平次の前に二つ三つお辞儀をしました。
あんたにさからっても無駄だってことはよく知ってる。……だから、こうして降参してるんじゃないか。……助けてやってくれとたのんでるんだ。
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
私達だけが、向うから流れてくる人波にさからって、反対の方へ行こうとしていた。ときどき私達を脅かしているものの方へ押し戻されそうになりながら。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
明朝早く出発して、豊後への帰国の途につく——そういって、大小をうしろ気味に差した久住は、いつもよりすこし早めに、風にさからってかえって行った。
彼は庭へは出されなかった。医師は、体重が日ましに減って行くのに、彼が相変らず一睡もせずに絶えず歩き廻っているのを見て、多量のモルヒネの皮下注射を命じた。彼はさからわなかった。
父親の園田氏に、小雀のように掴まれ乍らも、美しい花枝はあまりの事に必死とさからいます。
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
一人は忿怒ふんど懊悩おうのうに、日頃の冷静を失った、園田敬太郎氏、それに手を引かれて、さからい乍ら入って来たのは、東京新報の女記者、あの匂いこぼるるような、美しい園花枝です。
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)