じゃ)” の例文
旧字:
東片町時代には大分老耄ろうもうして居睡いねむりばかりしていたが、この婆さん猫が時々二葉亭の膝へ這上はいあがって甘垂あまったれ声をして倦怠けったるそうにじゃれていた。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
客は其音が此へ自分の尋ねて来た時、何処からか敏捷びんしょうに飛出して来て脚元にじゃれついた若いいぬの首に着いていた余り善くも鳴らぬ小さな鈴の音であることを知った。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
せんのと、それから「種」のモデルの方が三つです。一つはって前肢まえあしを挙げている(これは葉茶屋の方のです)。一つは寝転んでいる。一つは駆けて来てまりじゃれている。
同一おなじ処をちょっとも動かず、四足をびりびりと伸べつ、縮めつ、白いつらを、目も口も分らぬ真仰向まあおむけに、草にすりつけ擦つけて転げる工合ぐあいが、どうもいぬころのじゃれると違って
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よく見ると、堆い書物の隙間に大きな蝶が一つはねあしとで逃げ廻っていた。小猫は別にそれを取ろうとするでもなく、身体を横にしたり、とんぼ返りをしたりしてそれにじゃれついていた。
掠奪せられたる男 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
其処には舟底枕ふなぞこまくらがひっくり返っている。其処には貸本の小説や稽古本けいこぼんが投出してある。寵愛の小猫が鈴を鳴しながら梯子段はしごだんあがって来るので、みんなが落ちていた誰かの赤いしごきを振ってじゃらす。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)