愛着あいじゃく)” の例文
おれは、悪事をつむに従って、ますます沙金しゃきん愛着あいじゃくを感じて来た。人を殺すのも、盗みをするのも、みんなあの女ゆえである。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
薄野呂うすのろか何ぞのような眠たげな顔をして、いつ話のはずむと云うこともない小野田と親しくなるにつれて、不思議な意地と愛着あいじゃくとがお島に起って来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「はあ、人面瘡、成程、そのつらが天人のように美しい。芙蓉ふようまなじり、丹花の唇——でござったかな、……といたして見ると……お待ちなさい、愛着あいじゃくの念が起って、花の唇を……ふん、」
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかも、金無垢の煙管にさえ、愛着あいじゃくのなかった斉広が、銀の煙管をくれてやるのに、未練みれんのあるべき筈はない。彼は、請われるままに、惜し気もなく煙管を投げてやった。
煙管 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)