つもり)” の例文
「おいおいマリア、どうしたものだ。そう嫌うにもあたるまい。まんざらの男振りでもないつもりだ。いう事を聞きな、いう事を聞きな」
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「どうするつもりもないが、境遇のため眠ってるヒューマニチーの眼を覚まさせるため、真面目まじめな職業なり学問なりを与えてやりたいのだ」
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
それに唯今かうして伺ひますれば、御立派な御親戚がお有り遊ばすのに、どう云ふおつもりであんな事を有仰つたので御座いませう。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「意気地のないことを言っておくれでないよ。私は通りへ店を持つまでは、親の家へなんか死んでも寄りつかないつもりだからね」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
で、一旦は其奇遇そのきぐうに驚いたが、今はんなことを詮議する場合でない。彼は頼まるるままに角川家へ使つかいするつもりで、かくも窟の外へ走り出た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何人も満足せしめ得る程に明らかに自分は考えて居ないかも知れない、けれ共自分を満足せしむるけには、相当の考えを持って居るつもりである。
しかし前から下調したしらべをしておくようないとまが無かったのだから、何事もそのつもりで聞いて貰わなければならない。あるには有る。例えば羅馬ローマという国だ。
不吉の音と学士会院の鐘 (新字新仮名) / 岩村透(著)
岩淵をこちらに見て、大方おおかた跣足はだしでいたでしょう、すたすた五里も十里も辿たどったつもりで、正午ひる頃に着いたのが、鳴子なるこわたし
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と謂ツて學士は、何も謹嚴に構へて、所故ことさらひとに白い齒を見せぬといふつもりでは無いらしい。一體がえぬたちなのだ。顏はあをちろい方で、鼻は尋常だが、少しである。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
やはらかにつもりつたが、はんして荒々あら/\しくこぶしをもかためて頭上かしらのうへ振翳ふりかざした。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あすこへ畳を敷いて勉強の出来るようにしてやるから、その代わりたいして構いては出来ないが、自分の家にいるつもりで、ゆっくり気長に養生でもしたらいいでしょうと、まア好意ずくで薦めた。
白い光と上野の鐘 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
そのつもりではなかったのが、どうしても諷刺になって了った。
私は懐疑派だ (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「はいはいさようでござりますとも。私は奥様のお旨とならば、火の中であろうと水の中であろうと、飛び込んで行くつもりでござります」
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
同じ心持で清少納言や鴨長明かものちょうめいを読み、馬琴や京伝三馬の俗文学までもきわめ、課題の文章を練習するつもりで近松や馬琴の真似をしたり
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
雅さんがああ云ふ災難におあひなので、それが為に縁を切るつもりなら、私は、雅さん、……一年が間……塩断しほだちなんぞ為はしませんわ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
重太郎はう耳にも入れなかった。これからすぐにお葉の行方を追うつもりであろう、彼はもと来しかた直驀地まっしぐらに駈けて行った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ここに五十両もって来ているから、それで大概借金の方は片着くつもりだからといって、父親が胴巻から金を出したとき、お島は空怳そらとぼけた顔をして言った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「そのつもりあきらめねえ。おい、そう泣くのは止せ、弱虫だと見ると馬鹿にするぜ、ももんがあ。」といって大空を。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やわらかにつもりであったが、はんして荒々あらあらしくこぶしをもかためて頭上かしらのうえ振翳ふりかざした。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「だからさ、お前もそのつもりで、そんな小屋者の紫錦しきんなんて女を、近付けないようにしておくれよ。どうぞどうぞお願いですからね」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
境遇のため泥水稼業にちた可哀相な気の毒な女があって、これを泥の中から拾い上げて、中年からでも一人前になれる自活の道を与えるつもり
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「貴方失礼ながら、何でございますか、鰐淵さんの方にだお長くゐらつしやるおつもりなのですか。然し、いづれ独立あそばすので御坐いませう」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
わが子にむかっても平気で冗談を云うような人であった。加之しかも我子を又無く愛する親であった。遠からず我子に嫁を迎えて、自分は隠居するつもりの親であった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
落花の黒髮にかゝる風情、袂や裾に散る趣きも、今では皆がいきなり手を出して掴むぐらゐなつもりでゐる。
お花見雑感 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
アンドレイ、エヒミチはハヾトフが自分じぶん散歩さんぽさそつて氣晴きばらしせやうとふのか、あるひまた自分じぶん那樣仕事そんなしごとさづけやうとつもりなのかとかんがへて、かくふく着換きかへてともとほりたのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「お前もそのつもりでやっておくれ。この恩はお上さん一生忘れないよ」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そうして故意わざと快活に、そうして故意と道化たように、振舞っているに相違ない。ではこっちもそのつもりで、それに調子を合わせて行こう
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一番繁く出入して当人たしか聟君むこぎみ登第とうだいえいを得るつもり己惚うぬぼれてゐるのが、大学の学士で某省の高等官とかを勤める華尾はなを高楠たかくす
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
私ばかりでない、まだ同一おんなじ心の者が、方々に隠れている、その苧環おだまきの糸を引張ってさ、縁のあるものへ結びつけて、人間の手で網を張ろうというつもりでね、こうやって方々歩いている。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
アンドレイ、エヒミチはハバトフが自分じぶん散歩さんぽさそって気晴きばらしをさせようとうのか、あるいはまた自分じぶんにそんな仕事しごとさずけようとつもりなのかとかんがえて、とにかくふく着換きかえてともとおりたのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
上覧芝居を限りとして破門するからそのつもりで、とっくり考えておくがいい……そこでもう一度尋ねるが、書き附けを取りはしねえかな?
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それゆえ『片恋』一冊ぎりで再び彗星すいせいの如く隠れてしまうつもりであったが、財政上の必要が『片恋』一冊の原稿料ではたすに足りなかったので
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
芸妓げいしゃ落籍ひかせると隠さずにいって、金子かねを取って、それで、勿論二度とかかりあいはしないつもりじゃありますがね、苦界だけは救って素人にしてやろうと、お上人、可愧はずかしいんですが言います。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其滿足そのまんぞくかほひと見下みさげるやうな樣子やうすかれんで同僚どうれうことばふか長靴ながぐつ此等これらみな氣障きざでならなかつたが、ことしやくさはるのは、かれ治療ちれうすること自分じぶんつとめとして、眞面目まじめ治療ちれうをしてゐるつもりなのが。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかし私がその遺書のある肝心の部分だけを解り易い現代語に書き直して発表するということには多少の意味があるつもりである。
正雪の遺書 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
が、衛養療法や静座法を研究するつもり千家せんけの茶事を学ぶに等しい二葉亭の態度では禅に満足出来るはずがないのが当然で、結局禅には全く失望した。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ずッと心得こころえつもりじゃったが、さてあがる時見ると思いのほか上までは大層高い。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真面目まじめ治療ちりょうをしているつもりなのが。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
駿府の町を焼打に掛け、駿府の城を乗っ取るというのが、表向きの私の意見でしたが、その実そこで心静かに自殺するつもりなのでございました。
正雪の遺書 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何も特別の用務はないので、ただ来てさえくれればいというのだ。露西亜では官憲の交渉が七面倒臭いから、多分そんな方面にでも向けるつもりだろう。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
滝さん、まあ、こうやって、どうするつもりだねえ。いいえ、知ってるさ。私だって、そうだったが、殊にお前さん銭金ぜにかねに不自由はなし、売ってどうしようというんじゃあない、こりゃやまいなんだ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
、そんなように独合点しやがったのかい。……然うと聞いちゃ、まんざら慾の無い妾じゃアなし……ようし、そのつもりで。……
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
初めから長袖ながそでを志望して、ドウいうわけだか神主かんぬしになるつもりでいたのが兄貴の世話で淡島屋の婿養子となったのだ。
づツと心得こゝろえつもりぢやつたが、さてあがときるとおもひのほかうへまでは大層たいそうたかい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さりとてお礼は申さぬつもり、口惜しく思わば取り返しめされ! これ迄明かせば浮田家の内情、あれは悉皆出鱈目じゃ。
郷介法師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
夫人おくさまも余り途方もないのに呆れ返つて馬鹿に附ける薬は無いと陰で仰しやつたとも当人知らずに其後是非とも御批評を願ひますと色好い返事を催促するつもりで手紙をよこした。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
(もし、それへ乗って今からおげ遊ばすおつもりではないかい。)
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……ふん、畜生、云わねえつもりだな! 金仏かなぶつのように黙っていやがる! おしが自慢でもあるめえに。よし手前がその気ならもう一嚇ひとおどし嚇してくれる。ヤッ
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
処でおらの旦那がお世辞半分に新聞記者の天職をさかんなりと褒めて娘も新聞記者につもりだと戯謔面からかひづら煽動おだてたから、先生グツト乗気になつて早やむこ君に成済なりすましたやうな気で毎日入浸いりびたつてゐる。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
(もしそれつていまからおあそばすおつもりではないかい。)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)