悄々しを/\)” の例文
「えゝからけはあ、汝等わつらてえな餓鬼奴等がきめらごや/\ちや五月蠅うるさくつてやうねえから」與吉よきち悄々しを/\つた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私は紙に包んだ紅白の餅と麥煎餅を、兩手で胸に抱いて、悄々しを/\と其處を出て來たが、昇降口まで來ると、唯もう無暗に悲しくなつて、泣きたくなつて了つた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
私は悄々しを/\と村の家に帰つて行き、学校を退くこと、将来稼業を継いで百姓をするのに別段中学を出る必要はないこと、家のものと一しよに働きたいと言つた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
私は罪人のやうに深く頭を垂れながら悄々しを/\と暗い夜路を清水の方へと歩いて行つた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
いづれも腰繩を附けられ、あをざめた顔付して、人目をはゞかり乍ら悄々しを/\と通る。中に一人、黒の紋付羽織、白足袋穿ばき、顔こそ隠して見せないが、当世風の紳士姿は直に高柳利三郎と知れた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かぜ模樣もやうは……まあどうだらうと、此弱蟲このよわむし悄々しを/\と、少々せう/\ぐらつく欄干らんかんりかゝると、島田しまだがすつとつて……九月くぐわつ初旬しよじゆんでまだ浴衣ゆかただつた、そでむで、しろうみうへへさしのべた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あまりの事と學生は振返ツた……其のはなつらへ、風をあふツて、ドアーがパタンとしまる……響は高く其處らへ響渡ツた。學生は唇を噛みこぶしを握ツて口惜しがツたが爲方しかたが無い。悄々しを/\と仲間の後を追ツた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)