心意つもり)” の例文
そして林の中に君の姿が消えると同時に、君よりも先に此処に来着いてゐる心意つもりで駆け降りて来たのだが、君の脚並みは余程速かつた。
ピエル・フオン訪問記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「玄蕃が浪々のうちはとにかく、京極家という後ろ楯のついた今日、当家を去って誰を力に本懐を遂げる心意つもりじゃ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この騒動の原因を知らされてゐないミツキイは、勿論未だ、勇敢なジヨンニーの心意つもりで荒れ回つてゐたのである。
冗戯じょうだん云っちゃアいけません、そんな意気地なしじゃねえ心意つもりだが、聞けば、今夜の手曳きをする女って奴が、笊組の世話になっているお延だというじゃありませんか。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「水瀬や女中どもに手分けをさせて、どれ程尋ねたことやら知れませぬ。これ程まで、心をくだいているわらわを捨てて、お前様はどこへ逃げるお心意つもりでございますかえ?」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は好く悪口の心意つもりで「照ちやんの鼻は暖か味があふれてゐるよ。」と云ふのであつた。
或る日の運動 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「此間の晩の約束をお前はもう忘れたの? お前は妾をお瞞しになる心意つもりなの?」
山彦の街 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
斧四郎は、今日は、こんな心意つもりではなかった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)