御息所みやすどころ)” の例文
中宮の母君の御息所みやすどころが何ともなしに書かれた一行か二行の字が手にはいって、最上の仮名字はこれだと心酔してしまったものです。
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その時京極の御息所みやすどころは年十七、上人三たびその御手をとってわが胸に押し当てたので、すなわち懐胎なされたというのは、同じ近江国手孕村の古伝の混淆こんこうであるが
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
参議藤原玄上はるかみの女子で、皇太子保明親王の御息所みやすどころに上った人があったが、敦忠がまだ左近少将であった時分に、お二人の間の後朝きぬ/″\の使を勤めさせられたものであった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
わたしは、昔物語のなかの、なにがしの御息所みやすどころなどいうろうたげな女君めぎみに思いくらべていたりした。
大橋須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
だから葵の上も源氏より年上であり、其外、最初の恋人と思われる六条御息所みやすどころも又年上である。
反省の文学源氏物語 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
母君の御息所みやすどころの霊が宙宇にさまよって、どんな苦しみを経験しておいでになることかとは中宮の夢寐むびにもお忘れになれないことで
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
かの六条の御息所みやすどころのあさましさを思ふにげに偽りともいはれざりける。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
源氏は中宮ちゅうぐうの母君である、六条の御息所みやすどころの見物車が左大臣家の人々のために押しこわされた時のあおい祭りを思い出して夫人に語っていた。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
泣く泣く車へお乗りになりながらも、あたりばかりがおながめられになって、こちらへおいでになる時に、御息所みやすどころが病苦がありながらも
源氏物語:40 夕霧二 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御所では母の更衣のもとの桐壺を源氏の宿直所にお与えになって、御息所みやすどころに侍していた女房をそのまま使わせておいでになった。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
中宮ちゅうぐうの母君の御息所みやすどころは、高い見識の備わった才女の例には思い出される人だが、恋人としてはきわめて扱いにくい性格でしたよ。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
御息所みやすどころのことを言い出して、野の宮に行ってなかなか逢ってもらえなかった秋のことも話した。故人を切に恋しく思うふうが源氏に見えた。
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏に御禊みそぎの日の車の場所争いを詳しく告げた人があったので、源氏は御息所みやすどころに同情して葵夫人の態度を飽き足らず思った。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御息所みやすどころいみがもう済んだだろうね。時はずんずんとたつからね。私が遁世とんせいの望みを持ち始めた時からももう三十年たっている。味気ないことだ。
源氏物語:40 夕霧二 (新字新仮名) / 紫式部(著)
かくれになりました御息所みやすどころの御容貌ようぼうに似た方を、三代も宮廷におりました私すらまだ見たことがございませんでしたのに
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と宮に申し上げて、御息所みやすどころは手紙を少将から受け取ろうとした。少将は心に当惑をしながらも渡すよりほかはなかった。
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御息所みやすどころ——皇子女おうじじょの生母になった更衣はこう呼ばれるのである——はちょっとした病気になって、実家へさがろうとしたが帝はお許しにならなかった。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御息所みやすどころの女房なども次第に下がって行く者が多くなって、京もずっとしもの六条で、東に寄った京極通りに近いのであるから、郊外ほどの寂しさがあって
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御息所みやすどころの作である。この人を永久につなぐことのできた糸は、自分の過失で切れてしまったと悔やみながらも、明るくなっていくのを恐れて源氏は去った。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
同じ小野ではあるが夕霧の御息所みやすどころのいた山荘などよりも奥で、山によりかかった家であったから、松影が深く庭に落ち、風の音も心細い思いをさせる所で
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏の母君の桐壺きりつぼ御息所みやすどころの兄君の律師りっしがいる寺へ行って、経を読んだり、仏勤めもしようとして、二、三日こもっているうちに身にしむことが多かった。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
斎宮さいぐうの母君の御息所みやすどころが物思いの慰めになろうかと、これは微行で来ていた物見車であった。素知らぬ顔をしていても左大臣家の者は皆それを心では知っていた。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「一夜ばかりの」といって長い契りを望んだ御息所みやすどころの手紙が自分の所にある以上は、もうこの運命からお脱しになることはできないはずであるとたのむところがあった。
源氏物語:40 夕霧二 (新字新仮名) / 紫式部(著)
もともと宮の母君の御息所みやすどころはこの結婚に不賛成であったのが、衛門督の父の大臣の熱心な懇望が法皇を動かしたてまつって、お許しになることになったものであって
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
中央のに続いた南向きの座敷に席を作って客は迎えられた。普通の人たちのように女房だけが出て応接をするのは失礼であるといって、宮の母君の御息所みやすどころが逢った。
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
平生からすぐに遺骸いがいは火葬にするようにと御息所みやすどころは遺言してあったので、葬儀は今日のうちにすることになって、故人のおい大和守やまとのかみである人が万端の世話をしていた。
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
六条の御息所みやすどころと先夫人の葛藤かっとうが源氏を懲りさせたともいえることであった。御息所の立場には同情されるが、同棲どうせいして精神的の融和がそこに見いだせるかは疑問である。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一条の御息所みやすどころも珍しい至誠の人であると、近ごろになってますます来訪者が少なく、さびれてゆくやしきへしばしば足を運ぶ大将によって慰められていることが多いのであった。
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この御代みよになった初めに斎宮もお変わりになって、六条の御息所みやすどころ伊勢いせから帰って来た。
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と言って、御息所みやすどころはひどく泣き入る様子であった。大将もそぞろに誘われて泣いた。
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
斎宮さいぐうの伊勢へ下向げこうされる日が近づけば近づくほど御息所みやすどころは心細くなるのであった。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏が須磨へ移った初めの記事の中に筆者は書きらしてしまったが伊勢いせ御息所みやすどころのほうへも源氏は使いを出したのであった。あちらからもまたはるばるとふみを持って使いがよこされた。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
東宮に侍している他の御息所みやすどころ付きの女房などは、源氏の正夫人でない生母が付き添っていることをこの御息所のきずのようにうわさするのであるが、それに影響されるようなことは何もなかった。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
幸運の人というにほかならぬことがあかしされていくにつけて、この人の母である夫人と、伊勢いせ御息所みやすどころとの双方の自尊心が強くて苦しく競い合った時代に次いで、中宮とこの大将が双方とも
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
今までこの辺の座敷に出ていた人が奥へいざってはいった気配けはいが何となく覚えられて、衣擦きぬずれの音と衣の香が散り、えんな気分を味わった。いつもの御息所みやすどころが出て来て柏木の話などを双方でした。
源氏物語:37 横笛 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そして東宮の御息所みやすどころ桐壺きりつぼ曹司ぞうしで二夫人ははじめて面会したのである。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御息所みやすどころの感謝しておられる志も、せめてこの際に現わしたいと中宮は思召したのであるが、宮中からの賀の御沙汰ごさたを院が御辞退されたあとであったから、大仰おおぎょうになることは皆おやめになった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
御息所みやすどころが生きていたならば、どんなにこうしたことをよろこぶことであろう、聡明そうめいな後見役として女御の母であるのに最も適した性格であったと源氏は故人が思い出されて、恋人としてばかりでなく
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
母君の御息所みやすどころのことのために専心信仰の道へ進みたいと願いもあそばされるのであったが、だれも御同意にならぬことであったから、せめて功徳を作ることでき霊を弔いたいというお考えになって
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ほのかに言う様子は伊勢いせ御息所みやすどころにそっくり似た人であった。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
宮の御母の御息所みやすどころも非常に悲しんだ。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)