御宿おやど)” の例文
はなは唐突とうとつでありまするが、昨年夏も、お一人な、やはりかような事から、貴下あなたがたのような御仁ごじん御宿おやどをいたしたことがありまする。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もみながら今晩こんばんは何分御泊おとめ申こと出來難く其譯は今夜村の寄合にて後刻ごこくは大勢集まり候間御氣のどくながら御宿おやど御斷おことわり申上ると云けるに武士は樣子やうす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
くらい方へ行つた。女は何とも云はずにいてる。すると比較的淋しい横町のかどから二軒目に御宿おやどと云ふ看板が見えた。これは三四郎にも女にも相応なきたない看板であつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
どこへつけるつて、宿やどへつけるのにきまつてゐるから、宿だよ、宿だよと桐油とうゆうしろから、二度ばかり声をかけた。車夫はその御宿おやどがわかりませんと云つて、往来わうらいのまん中に立ち止まつた儘、動かない。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
進めされば秀盛先生はこの近邊きんぺんにも御弟子これ有よしにて時々御指南に御出おいでなされて滯留たうりうせつ毎度まいど私方わたくしがたにて御宿おやどを申上夫ゆゑ大先生の御咄おはなしに貴方樣の御噂おうはさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いだし五六日預かり給はれといひしに桐屋の亭主其御金は御宿おやどへ御預けなされては如何に候やと云ふに彼の客然れば宿は懇意こんいの者ゆゑ金銀をつかふ事を異見いけん致せば預ける事かなひ難し其譯そのわけは金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)