屋内なか)” の例文
この頃館の裏口では、頼母と主馬之進とが不安そうに、破壊された戸口から屋内なかを覗きながら、聞こえてくる物音に耳を澄ましていた。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
家のめえには、この長屋に用もありそうのねえ、りっぱな駕籠が、止まっているし、屋内なかにはまた、抹香まっこうくせえお談議が始まっていらア。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
屋内なかから声がする。だが乞食は息切れがしているので返事が出来ない。やたらに叩くばかりだ。と、やがて寝台の軋る音と、床に跫音あしおとがした。
乞食 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
ともかく君が何んといってもあの人が話していた『竜の玉』ってのを一目見ないうちは帰らないつもりよ。さ、早く鞄を持ちたまえ、屋内なかへ入りましょう。
「諸君、屋内なかにいるんだ。」と船長が言った。「九分九厘までこれは策略ですから。」
斯う考へて、夢のやうに歩いた。ぶらりと扇屋の表に立つて、軒行燈の影に身を寄せ乍ら、屋内なかの様子をのぞいて見ると、何か斯う取込んだことでも有るかのやうに人々が出たり入つたりして居る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
錠をこじあけて屋内なかへ入ると、彼はそのを要心ぶかく締めきって、じっと耳を澄ました。
空家 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
彼奴きゃつらなんとかしてこの戸をひらき、屋内なかへ入ったに相違ない。戸を破り我らも屋内へ入るとしよう! ……それでなくともこの閉扉の館へ、わしは入ろうと思っていたのだ。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
屋内なかに人なんぞおりません」と、大公は自若。
屋内なかから今の声が怒鳴った。
乞食 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「つまり、屋内なかにいる人に」