悄然しょうぜんとして呟く紺背広こんせびろの技師の一歩前で、これはまた溌剌はつらつとした栖方の坂路を降りていく鰐足わにあしが、ゆるんだ小田原提灯おだわらぢょうちんの巻ゲートル姿でうかんで来る。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
急ぎの用の旅人でもあろう、小田原提灯おだわらぢょうちんで道を照らし、二人連れでスタスタと、東海道の方へ歩いて行った。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
戸は残りなくとざされている。ところどころの軒下に大きな小田原提灯おだわらぢょうちんが見える。赤くぜんざいとかいてある。人気ひとけのない軒下にぜんざいはそもそも何を待ちつつ赤く染まっているのかしらん。
京に着ける夕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女はすべてを察し、上りばなで小田原提灯おだわらぢょうちんに灯を入れていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)