とう)” の例文
夕の御饌が嘗であるのに、それに先だっていかにとうとい諸国の神々でも、前々から御相伴をするとは考えられないことである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あのとうとかりし我熱情の、いたずらに消耗された事を思い嘆くあまりの、焦燥から来た我執とみなければなるまい。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
あなとうとや観世音菩薩ぼさつかたじけなや勢至菩薩。筏のへさきに立って、早や招いていらるるぞ。やっしっし、やっしっし、それ筏は着くぞ。あのたえなる響は極楽鳥の鳴き声じゃな。
或る秋の紫式部 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
花毯ばかりではない、すべて支那の器具は皆抜けている。どうしても馬鹿で気の長い人種の発明したものとほか取れない。見ているうちに、ぼおっとするところがとうとい。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
拈華微笑ねんげびしやうとうとさに
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
我邦わがくにの現在「にひなめ」と呼んでいるとうとい式典と、二者だいたいに同じものということを、意識した上での用法であったかという点である。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
伝わっているようにもうけたまわるのはかたじけないことで、少なくとも是は一国の古事を学ばんとする者に、或る方法を設けてあずかり知らしめておくべきとうとい事実であった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)