たふと)” の例文
平日しめしていはれしは、我雪頽なだれうたれしとき筆をりてたりしは、たふと仏経ぶつきやうなりしゆゑたゞにやはとて一ごと念仏ねんぶつ申て書居かきをれり
(是等の戰ひにトルクァート、己が蓬髮おどろのかみちなみて名を呼ばれたるクインツィオ、及びデーチとファービとはわが悦びていたたふとほまれを得たり)
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
技法ぎはふ尖鋭せんえい慧敏けいびんさは如何いかほどまでもたふとばれていいはずだが、やたらに相手あひて技法ぎはふ神經しんけいがらして、惡打あくだいかのゝしり、不覺ふかくあやまちをとが
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
港口みなとぐちんでえるのをました……あつとおもふとゆめめたが、月明つきあかりにしも薄煙うすけぶりがあるばかり、ふねなかに、たふとかうかをりのこつたと。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ロミオ このいやしいたふと御堂みだうけがしたをつみとあらば、かほあかうした二人ふたり巡禮じゅんれいこのくちびるめの接觸キッスもって、あらよごしたあとなめらかにきよめませう。
そればツかりぢやアない、まア明治世界めいぢせかいにとつてはたふと御仁おひとさ、福分ふくぶんもあり、うんもあるから開運出世大黒天かいうんしゆつせだいこくてんさ。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
をおもふたふと親心おやごゝろ! おやにとつてほどのものがありませうか。どもはいのち種子たねであり、どもはぐものであり、どもはてん使つかひであり。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
内新好ないしんかうが『一目ひとめ土堤づゝみ』に穿ゑぐりしつう仕込じこみおん作者さくしや様方さまがた一連いちれんを云ふなれば、其職分しよくぶんさらおもくしてたふときは扇子せんす前額ひたひきたへる幇間だいこならんや。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
みなくらゐたか身分みぶんたふとかたで、一人ひとり石造いしつくりの皇子みこ一人ひとり車持くらもちの皇子みこ一人ひとり右大臣うだいじん阿倍御主人あべのみうし一人ひとり大納言だいなごん大伴御行おほとものみゆき一人ひとり中納言ちゆうなごん石上麻呂いそのかみのまろでありました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
そも/\われは寄辺よるべない浮浪学生ふらうがくしやう御主おんあるじ御名みなによりて、もり大路おほぢに、日々にちにちかてある難渋なんじふ学徒がくとである。おのれいまかたじけなくもたふと光景けしき幼児をさなご言葉ことばいた。
左様さうぢや無い、私はたしかに身も心も献げたたふと丈夫かたるのです、けれど篠田さん——貴方は少しも私の心
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
宝石類が昔から病気予防のために「お守り」として用ひられて居ることは言ふまでもなく、ダイヤモンドは「平和をもたらし」「暴風を防ぐ」ものとしてたふとばれて居る。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
本朝に儒教をたふとみてもは王道わうだうたすけとするは、菟道うぢきみ百済くだら七六王仁わにを召して学ばせ給ふをはじめなれば、此の兄弟はらからきみ心ぞ、やが漢土もろこしひじりの御心ともいふべし。
神樣かみさままをげるかたは、たふとくもありまた、おそろしくもあるかたで、われ/\の祖先そせんにおつしやつた言葉ことばは、祖先そせんひとたちがおそつゝしんでうけたまはり、實行じつこうしなければならない命令めいれいでありました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
頭の鈍いガラツ八にも、何となく失策平次しくじりへいじたふとさがわかつたやうな氣がしました。
ものぐるひは悲しきものぞまもらせる君こそたふとあはれたふときけふのたふとさや
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
東京の人と言へば、たふといものに見える田舍町の人の眼をもおもふた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
かしよ、にくみきざはしたふと神木しんぼく、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
花束よ、たふとく、なつかしき花束よ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
不断ふだんくゆり、内陣ないぢんたふとさ深さ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
高き、たふとき、たぐひなき
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
たふとかる淨土の寺の
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
進められ夫は何か仔細しさいの有さうな事シテ然樣に拷問がうもんに掛るには何か證據しようこがなくてはならず何ぞのがれ難き證據にても有しやとたづねらるゝに藤八つゝしんで答ふる樣先月二十日は節が實母じつぼの七年祥當なるにより大井川の東上新田村と申處にたふと御僧ごそうが在る故何卒母の供養くやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たとへば他人ひとの願ひ表示しるしとなりて外部そとにあらはるゝとき、たふとき魂言遁いひのがるゝことをせず、たゞちにこれを己が願ひとなすごとく 一三〇—一三二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
以前いぜん少年せうねん手傳てつだつて、これからつゝみいて、人參にんじん卓子テエブル一杯いつぱい積上つみあげる。異香いかう室内しつない滿つ——で、たふとさが思遣おもひやられる。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ロレ さゝ、わしと一しょにござれ。はやすましてのけう。慮外りょぐわいながら、たふと教會けうくわい二人ふたり一人ひとり合體がったいさするまでは、さしむかひでゐてはなりませぬのぢゃ。
パーシユーズは困つて、「もつとたふとい物を求めて下さい。メヂューサの首でも自分は辞せない」とくちすべらす。王はたちまち、「それぢやメヂューサの首を持つて来て貰はう」
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
とまり山をするもの、このふぢづるなければ水をくむ事ならず、よしやなはを用ふとも此藤のつよきにはおよぶまじ。このゆゑに泊り山するものら、此つるたからのごとくたふとぶとぞ。
かうなつて來ると、一體私は内容ないようの方に心をかれるものですが、とても形式方面の缺點けつてん非難ひなんかへりみる暇はありません。そのゑがかれてゐる事に對して、作の大きなたふとさをかんじて了ふのです。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
たふといあすこの水盤すゐばんつてみたならさぞよからう。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
たふとくなつかしき日よ、われは今
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かくてかのたふと徴號しるし、いよ/\つよく目を燃やしつゝ、我をながく驚異あやしみのうちにとめおかじとて、答ふらく 八五—八七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
百人一首ひやくにんいつしゆうたほんにおいであそばす、貴方方あなたがたにはおわかりあるまい、たふと姫君ひめぎみ繪姿ゑすがたに、面影おもかげさせられた御方おかたから、おこゑがかりがありました、言葉ことばちがひありませぬ。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大昔のヘブライ人が「デーン」と称して居たものと同じであつてヤコブの時代には非常にたふとばれた「創成」の歴史によると、リユーベンが野に於てこの植物を見つけ、其の母のリエーに与へた。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
この作のたふとさを主張しゆちやうして止まなかつたのです。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
内なるたふとき物皆をとして
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
また最終いやはての夜と最始いやさきの晝との間に、これらの道のいづれによりても、かくたふとくかくおほいなるわざは爲されしことなし爲さるゝことあらじ 一一二—一一四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
師斯く、かのたふとき民手背てのおもてをもて示して曰ふ。さらば身をめぐらして先に進め。 一〇〇—一〇二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)