たつと)” の例文
つらつら観ずれば、人の命なるもの、たつとしと思えば、尊ときに相違なけれど、とうとからずと見る時は、何のまた些少いささかの尊さのあるべき。
一夜のうれい (新字新仮名) / 田山花袋(著)
果して暫くするうちに、たつとい儀式をする時の感じが次第に弱くなつた末に、とう/\只の習慣で贄を捧げてしまふやうになつた。
世界の偉人がこの馬車に乗つて毎日停車場ステエシヨン船乗場ふなのりばかれるのであると思ふ時、右の肱掛の薄茶色のきれがほつれかかつたのもたつとく思はれた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
士卒しそついまかず、百せいしんぜず。ひとにしてけんかろし。ねがはくはきみ寵臣ちようしんくにたつとところもつぐんかんせしめば、すなはならん
われらを愛する者、人誰か愛せざらむ、わが心、救世主すくひぬしを見て、躍り喜ぶ。もろ/\の信者たちきたれ、われらが爲に生れ出で給ふこの幼兒をさなごたつとうやまはむ。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
賓頭盧尊者びんづるそんじやざうがどれだけたつといものかぞんぜずにいたしたことゝえます。唯今たゞいまではくりや僧共そうども食器しよくきあらはせてをります。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
いま社會しやくわいは一回轉くわいてんした。各個人かくこじん極端きよくたん生命せいめいおもんじ財産ざいさんたつとぶ、都市としは十ぶん發達はつたつして、魁偉くわいゐなる建築けんちく公衆こうしゆ威嚇ゐかくする。科學くわがくつき進歩しんぽする。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
それと同じやうに、芸術をいろ/\な人間の仕事の中で、一番たつといものだと思つてゐる、兄の心も悲しかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「おお、わがよ」とおほせられて、人間にんげんどものらないきよたつといなみだをほろりとおとされました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
敵と申候儀だう理に存候すれば天下の御奉行樣にも罪なき者を御仕置おしおきに仰付られしは同樣ならんか併したつとき御方故其儘そのまゝに相濟候事や私しどもが然樣さやうみちかけたる事あらば重き御咎おとがめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此時 御領主より彦右ヱ門せがれへ米五俵、浅右ヱ門さいへ米五俵たまはりし事をしるしあり。此魚沼郡うをぬまこほり大郡たいぐんにて 会津侯御あづかりの地なり。元文の昔も今も 御領内ごりやうない人民じんみんあはれみ玉ふ事あふぐべくたつとむべし。
目鼻めはなだちの何處どこやらが水子みづこにてせたる總領そうりやうによくたりとて、いまはなきひとなる地主ぢぬし内儀つま可愛かあいがられ、はじめはお大盡だいじん旦那だんなたつとびしひとを、父上ちゝうへぶやうにりしは其身そのみ幸福しやわせなれども
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これはなんのために使つかつたのであるか、たしかにはわかりませんが、この巨石きよせきむかしひとかみとして崇拜すうはいしたものであるか、またはたつと場所ばしよ目標もくひようとしたものであらうと想像そう/″\するよりほかはありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「私よりも貴方の事だ。生はたつといものですよ。」
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
景公けいこう諸大夫しよたいふかうむかへ、ねぎられいし、しかのちかへつて(三二)しんかへる。すでにして穰苴じやうしよたつとんで大司馬たいしばす。田氏でんしもつ益〻ますますせいたつとし。
此時 御領主より彦右ヱ門せがれへ米五俵、浅右ヱ門さいへ米五俵たまはりし事をしるしあり。此魚沼郡うをぬまこほり大郡たいぐんにて 会津侯御あづかりの地なり。元文の昔も今も 御領内ごりやうない人民じんみんあはれみ玉ふ事あふぐべくたつとむべし。
ステパンは今その時期になつてゐて、マリイをたつといものゝやうに見上げてゐるので、その天使のやうな処女をとめにお前なんぞと云ふ事は出来にくいのである。ステパンはやうやうの事で語を次いだ。
君をほかにして、我にうやまたつとぶもの無からしめ、イシスにもオシリスにも
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
目鼻だちの何処どこやらが水子みづこにてせたる総領によく似たりとて、今はなき人なる地主の内儀つま可愛かあいがられ、はじめはお大尽の旦那とたつとびし人を、父上と呼ぶやうに成りしはその身の幸福しやわせなれども
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さはいへど人妻ひとづまならばおよぶまじことなりたしかめてのち斷念だんねんせんのみ、うきたるこひこゝろをくす輕忽あわつけしさよともおぼさんなれど、父祖傳來ふそでんらい舊交きうかうありとて、其人そのひとこゝろみゆるものならず、家格かかくしたが門地もんちたつと
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もろ/\の信者たち、きたれ、この今生れたる幼兒をさなごたつとうやまはむ
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
あはれみてやめぐむともなきめぐみによくして鹽噌えんそ苦勞くらうらずといふなるそはまた何處いづこれなるにやさてあやしむべくたつとむべき此慈善家このじぜんか姓氏せいしといはず心情しんじやうといはず義理ぎりしがらみさこそとるはひとりおたか乳母うばあるのみしのび/\のみつぎのものそれからそれと人手ひとで
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)