射干ひあふぎ)” の例文
かういふことを云つたのである。不審に思つたから再び脇へ出て見たら、杉皮が僅に雨を覆うて居る檐端のきばの手の屆く所に鳥の巣が二つならんである。射干ひあふぎのすぐ上である。
炭焼のむすめ (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
射干ひあふぎにも似、菖蒲あやめにも似たる葉のさま、燕子花かきつばたに似たる花のかたち、取り出でゝ云ふべきものにもあらねど、さて捨てがたき風情あり。雨の後など古き茅屋かややの棟に咲ける、おもしろからずや。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
かよわなる薄陽うすび光線ひすぢ射干ひあふぎの細葉は透けど早やなむとす
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
暑中休暇の後であつたといふのは庭に射干ひあふぎ草叢くさむらがあつたので記憶して居る。
開業医 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
射干ひあふぎの日射に隣る鐘のいぼかがやき染まず秋にはなりぬ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
小屋へ腰を掛けて居ると鶺鴒せきれいが時々蟲をくはへて足もとまで來ては尾を搖しながらついと飛んで行く。脇へ出て見ると射干ひあふぎが一株ある。射干があつたとて不思議ではないが爺さんの説明が可笑をかしいのだ。
炭焼のむすめ (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
どうも射干ひあふぎらしいので何だときくと
開業医 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)