大船おおふな)” の例文
大船おおふな近くの土堤どての桜はもうすっかり青葉になっており、将来の日本ハリウード映画都市も今ではまだ野良犬の遊び場所のように見受けられた。
箱根熱海バス紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それからまたトランクをさげて、桜木町の駅に行き、大船おおふなまでの切符を買った。食えなくなったら映画俳優になるんだ。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
わたしなどは盛夏せいかの食べ物に困りきっている時など、大いにそれで助けられ、大船おおふなから暑さを意とせず、毎日のように新橋へと足をのばしたものである。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
「だって、いただきたくないんですもの。もし、おなかがすいたら、大船おおふなでサンドウィッチを買いますわ。あすこのサンドウィッチ、とてもおいしいんですもの」
香水紳士 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
赤十字病院を退院すると私はすぐに、大船おおふなの常楽寺に行って静養する事になった。そこには今村のお嬢さんが絵の稽古旁々かたがた松洲先生等と一緒に避暑に行っていたからであった。
昨夜まで人見廣介であった男は、それから一日、乗替駅の大船おおふなの安宿で暮して、その翌日の午後、丁度ってT市に着く汽車を選んで、やっぱり変装のまま、三等車の客となりました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ここから先の地形が、なんとなく横浜よこはま大船おおふな間の丘陵起伏の模様と似通っていた。とある農家の裏畑では、若い女が畑仕事をしているのを見つけた。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
立派なる洋館も散見す。大船おおふなにて横須賀行の軍人下りたるが乗客はやはり増すばかりなり。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)