夜這よば)” の例文
それから、雑夫の方へ「夜這よばい」が始まった。バットをキャラメルに換えて、ポケットに二つ三つ入れると、ハッチを出て行った。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
南方先生若い盛りに黒奴くろんぼ女の夜這よばいをしかかえしたに次いで豪い(『別訳雑阿含経』巻二十、南方先生已下いかやつがれの手製)。
それにしても、夜々、彼女のねや夜這よばいを思い立ちながら、抑えに抑えて、夜明けを待つのは苦しかった。益なき疲労を、昼にはどこかで悔やんでいた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十返舎一九じっぺんしゃいっくの『膝栗毛』も篇を重ねて行くに従い、滑稽の趣向も人まちがいや、夜這よばいが多くなり、遂に土瓶の中に垂れ流した小便を出がらしの茶とまちがえて飲むような事になる。
裸体談義 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
火箸ひばし埋火うずみびき集めながら)でも、田舎では、こんな事は珍らしくないんでしょう? 田舎の、普通の、恋愛形式になっているのね、きっと。夜這よばいとかいう事なんじゃないの?
冬の花火 (新字新仮名) / 太宰治(著)
丈余じょうよの雪に青春の足跡をしるしている夜這よば
禅僧 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「ボル派の夜這よばいがひどくてやり切れない」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
ちょうど夜這よばいに往って熊公じゃねえかと呼ばるると褌を捨てて敗亡するごとく、南無阿弥陀仏の大聖不動明王のと名号を唱えらるると、いかな悪人をも往生せしめ、難を救わにゃならぬ理窟だ。