奥の方には、柩があるのであろう。夏目金之助之柩なつめきんのすけのひつぎと書いたはたが、下のほうだけ見えている。うす暗いのと香の煙とで、そのほかは何があるのだかはっきりしない。
葬儀記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)