咬緊くひし)” の例文
貫一はをののくちびる咬緊くひしめつつ、ことさ緩舒ゆるやかいだせる声音こわねは、あやしくも常に変れり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
宮は泣音なくねほとばしらんとするを咬緊くひしめて、濡浸ぬれひたれるそで犇々ひしひしおもて擦付すりつけたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
恐くは我が至誠のかがみは父が未然を宛然さながら映しいだしてあやまらざるにあらざるかと、事の目前まのあたりの真にあらざるを知りつつも、余りの浅ましさに我を忘れてつとほとばし哭声なきごゑは、咬緊くひしむる歯をさへ漏れて出づるを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)