周匝あたり)” の例文
蛇目の傘をさした若い女の紫の袴が、その周匝あたりの風物としつくり調和してゐた。傘をさす程の雨でもなかつた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
男も女もしめやかな戀を抱いて歩いてる樣に見える、蛇目の傘をさした若い女の紫の袴が、その周匝あたりの風物としつくり調和してゐた。傘をさす程の雨でもなかつた。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
もう日が何時しか沈んだと見えて、周匝あたりがぼうつとして来た。渓川の水にも色が無かつた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
這麽こんな理由とも気が付かず、唯モウ暗い陰影かげに襲はれると自暴やけに誇大なことばを使つて書く、筆が一寸つまづくと、くすんだ顔を上げて周匝あたりを見る。周匝は何時でも平和だ、何事も無い。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ト、八戸君も小松君も、卓子から離れて各々めいめい自分の椅子を引ずつて暖炉ストウブ周匝あたりに集る。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
周匝あたりには心地よい秋草の香が流れて居る。此香は又、自分を十幾年の昔に返した。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
周匝あたりには心地よい秋草の香が流れて居る。此香は又自分を十幾年の昔に返した。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
遠くで鷄の聲の聞えた許り、神寂びた宮居は寂然ひつそりとして居る。周匝あたりにひゞく駒下駄の音を石甃いしだゝみに刻み乍ら、拜殿の前近く進んで、自分は圖らずも懷かしい舊知己の立つて居るのに氣付いた。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
遠くで鶏の声の聞えた許り、神寂びた宮居は寂然ひつそりとして居る。周匝あたりにひびく駒下駄の音を石甃に刻み乍ら、拝殿の前近く進んで、自分は図らずも懐かしい旧知己の立つて居るのに気付いた。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
點けた許りの明るい吊洋燈つるしランプ周匝あたりには、莨の煙が薄く渦を卷いて居た。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
点けた許りの明るい吊洋燈つりランプ周匝あたりには、莨の煙が薄く渦を巻いて居た。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして、周匝あたりの木々の葉裏にはもう夕暮の陰影かげが宿つて見えた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
周匝あたりはもう薄暗かつた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)