隣の吉雄幸左衛門よしおこうざえもんが見兼ねたものか、どうなすった、だいぶお顔の色が悪いようだが、と囁いたが、それにもちょっと頭を動かして頷いたばかり、返事をする気にもなれない。
先年いろいろ世話になった大通詞の吉雄幸左衛門よしおこうざえもんや通詞の西善三郎なども招かれて来ていて、参府の折の本草会の話なども出たが、先生の胸中には悲哀の情と佶屈きっくつの思いがあるので