それは七間か八間ぐらいの中流住宅で、門の柱には北川十郎きたがわじゅうろうという表札がかかっています。もう家中が寝てしまったのか、窓から明りもささず、さもつつましやかな家庭らしく見えるのです。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)