刹那的せつなてき)” の例文
彼は、ズッと遠い以前からの歴史も、また、たった今何か考えた刹那的せつなてきな考えも、二度目であるように思った。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
それだから大勢だからって恐れる必要は少しもない。何人いても一人と闘う精神でやる。十人も刹那的せつなてきには一人だからその一人々々を手近から片付けて行く。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
又、個人的に思ってみても、刹那的せつなてき快楽や、虚無に尽きる放縦ほうじゅうが、どれほど生涯につづくか、その突当りは、滅失の穴にきまっているのだ、何の人間らしい生命の光や幸福を感じる深さがあろう。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分一人の快楽をもとめているだけなのだから、刹那的せつなてきな満足の代りに軽蔑と侮辱を受けるだけで、野合以上の何物でもあり得ない。肉慾の場合に於ても単なるエゴイズムは低俗陳腐なものである。
いずこへ (新字新仮名) / 坂口安吾(著)