六ヶ敷むずかし)” の例文
最初に与えられた仕事というのは、名士や夫人を訪問する事で、余り六ヶ敷むずかしい事とも思われませんが、中中然うでないのです。
職業の苦痛 (新字新仮名) / 若杉鳥子(著)
万吉郎は、この六ヶ敷むずかしい問題の解答をひねりだすために、気をかえて、昔彼が好んで徘徊していた大川端へブラリと出かけた。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
「随分と厚い硝子だ。これなら少し位の事ではこわれっこない。けれど、こんなに水が一ぱい入ってるんじゃ、こぼさずに動かすのは一寸六ヶ敷むずかしいな」
赤い手 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
六ヶ敷むずかしい言葉ばかりで、私共にはよく判りませんでしたが「天子様のため」とか「人民のため」とかいう言葉が何遍も何遍も出て来たようで御座いました。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
六ヶ敷むずかしい本を読めと云うように、心を鞭打つ如く感じさせる折には、なりたけ読み易い本を手にして、この待合所の大きな皮張りの椅子に腰をかけるのであった。
銀座界隈 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
若「それも左様そうだねえ……中々頑固だから六ヶ敷むずかしいことを云うかも知れないから、困ったね」
何ういう訳だと訊いて見たら、牧師は独身に限る、独身でなければ牧師の天職は完全に果せないと答えた。馬鹿に六ヶ敷むずかしい事をいう。けれども乃公は成程左様そうですねと賛成して置いた。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
たとえくさりしばられていないにせよ、三人の悪者が此方に注意していないにせよ——何うしても逃げ出されないのだ。四面とも切り落したような峻嶺しゅんれいである。とてもこれをよじのぼって逃ることは六ヶ敷むずかしい。
捕われ人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ウフフ。そんな六ヶ敷むずかしいことが俺に分るかというんだ。——しかしウラゴーゴルのけだものたちは、その力のことをシュピオルと呼んでいたぜ」
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
奥さん——は新時代の婦人で、熱心な女権論者サッフラジェットだそうだ。女権論者って何だと訊いたら、何でも大変六ヶ敷むずかしい事で子供には話しても分らないと言った。そして其主張そのしゅちょうには半面の真理があるそうだ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「やっぱり駄目だね。なんという六ヶ敷むずかしい連立方程式だろう。もっとも方程式の数が、まだ足りないのかも知れない」
獏鸚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
例えば、屍体が溶けて濃度が或る個所だけ濃くなり過ぎると、直ぐその部分が変質して不溶解性ふようかいせい新成物しんせいぶつを生ずる。そこに攪拌かくはん六ヶ敷むずかし手際てぎわが入用だ。
殺人の涯 (新字新仮名) / 海野十三(著)
初めは馬鹿にしたような顔をしていたが、読んでいくにつれてだんだん六ヶ敷むずかしい顔になって、顔がカーッと赤くなったと思うと、そのうちに反対にサッと顔面から血が引いて蒼くなっていった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ここのところ鳥渡六ヶ敷むずかしいんだけれど、貴方に分んなさる?
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)