他人目ひとめ)” の例文
他人目ひとめもはゞからず大立廻りを演じたのを彼は見たことがあるがその時彼は必らず秘かな羨望を感じたものであつた。
小川の流れ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
気持が幾分か落着いて来ると、私は毎晩毎晩、夜更よふけになってから他人目ひとめぬすんで、生前の娘にそっくり似ている等身大の人形をつくりにかかった。
しかし私には他人目ひとめにつくかの如き凡そ何んな類ひの癖も生来から皆無であつたのに、突然ちか頃になつて、これはまた凡そ他人目につき易い実にも仰山に珍奇な癖が生じてゐた。
天狗洞食客記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
正勝の姿を見失った紀久子は他人目ひとめを盗むようにして、その合宿部屋の前へ歩み寄っていった。合宿部屋にはしかし、正勝の入っているらしい気配はなく、重い板戸が固く閉まっていた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)