人手ひとで)” の例文
それは現世げんせですることで、こちらの世界せかいでは、そなたもとおり、衣服きものがえにも、頭髪おぐし手入ていれにも、すこしも人手ひとでらぬではないか。
御意ぎよいにござります。みよしえました五位鷺ごゐさぎつばさり、くちばしかぢつかまつりまして、人手ひとでりませずみづうへわたりまする。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたし子供こども大好だいすきですし、これから、むら人手ひとでりなくて、みんながはたらくのにこまりますから、子供こども世話せわをするものがようだとおもったのです。
汽車は走る (新字新仮名) / 小川未明(著)
加代 人手ひとでが足りなけれや、予備班つていふのがあるんだから、お父つあんなんか行つたつて、追ひ返されるだけよ。
宗助そうすけ一人ひとり着物きもの着換きかえたが、てた洋服やうふくも、人手ひとでりずに自分じぶんたゝんで、押入おしいれ仕舞しまつた。それから火鉢ひばちいで、かす用意よういをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
当時の記念かたみとしては鹿鳴館が華族会館となって幸い地震の火事にも無事に免かれて残ってるだけだが、これも今は人手ひとでに渡ってやがて取毀とりこぼたれようとしている。
友仙いうぜんおびぢりめんのおびあげも人手ひとでりずにばしこくめたる姿すがた不圖ふとたるには此樣このやう病人びやうにんともおもるまじきうつくしさ、兩親ふたおや見返みかへりて今更いまさらなみだぐみぬ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
初心しよしん發掘はつくつとしては權現臺ごんげんだい大成功だいせいこうであつた。無論むろん遺物ゐぶつ豐富ほうふでもつたのだが、たくからちかいので、數々しば/″\られたのと、人手ひとでおほかつたのも勝利しやうり原因もとであつた。
この家にて或る年田植たうえ人手ひとでらず、明日あすそらあやしきに、わずかばかりの田を植え残すことかなどつぶやきてありしに、ふと何方いずちよりともなくたけひく小僧こぞう一人来たりて
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
半江のそのは、重太郎氏が数ある蔵幅のなかでも一番好いてゐただけに、松蔵氏は何とかして買戻さねば承知出来なくなつた。で、最近人手ひとでで星島氏に談判を持込んだ。
年明後ねんあけごつまとなし越後に實親じつおやありとたづね行しに同國猿島河原にて人手ひとでかゝり其くびをば川下にて見附みつけたりと申す然すれば其方どもか奸計かんけいにて右の死骸しがいむすめせがれ着物きるゐを着せ傳吉を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼は長押しに手をかけた儘、ぶらりと宙へぶら下つた。姉や姉の友だちは、さう云ふ彼を救ふ為に、私を叱つたりすかしたりした。が、私はどうしても、踏み台を人手ひとでに渡さなかつた。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
で、僕は「省電しょうでん各駅下車の乗客分類」というなり大規模だいきぼの統計が行われるとき、人手ひとでが足らぬから是非ぜひに出てほしいということで、とうとう参加する承諾を先生に通じてしまった。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
池上權藏いけがみごんざう此日このひからうまかはりました、もとより強健きやうけん體躯からだもつ元氣げんきさかんをとこではありましたが、放蕩はうたう放蕩はうたうかさねて親讓おやゆづり田地でんちほとんえてくなり、いへ屋敷やしきまで人手ひとでわたりかけたので
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
磯巾着、海藻、人手ひとでなど、そのほか、なにを食べているか分からない。
鯛釣り素人咄 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
此際このさいあるひ倒壞家屋とうかいかおく下敷したじきになつたものもあらうし、あるひ火災かさいおこしかけてゐる場所ばしよおほいことであらうし、救難きゆうなん出來できるだけおほくの人手ひとでようし、しかもそれには一刻いつこく躊躇ちゆうちよゆるされないものがある。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それから、私は、ミルコオトのジョオジ旅館や、その他出來るだけ方々から、もつと大勢臺所に人手ひとでを集めなくてはなりません。それに、御婦人方はお供の女中を、殿方は從者をお連れになるでせう。
また、わたしは、これから西にしにゆきますと、ひろいりんごばたけがあって、そこでは人手ひとでのいることをっています。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とられしと云もをはらぬに重四郎成程なるほど金兵衞親方が殺されたと云うはさは聞たれ共人の云事ゆゑ實正じつしやうとも思はざりしが夫なら彌々いよ/\人手ひとでかゝられしかしてかたきは知しかと聞に掃部されば其事に付貴殿へ助太刀すけだち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
人手ひとでにかけては粗末そまつになるものきこえよがしの經濟けいざいまくらもとにしらせぬ。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
毎夜まいよごとく、内井戸うちゐど釣瓶つるべの、人手ひとでらずつたのもく……
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちゝ一昨年をとゝしうせたるときも、はゝ去年きよねんうせたるときも、こゝろからの介抱かいはうよるおびたまはず、るとてはで、がへるとては抱起だきおこしつ、三月みつきにあまる看病かんびやう人手ひとでにかけじと思召おぼしめしのうれしさ
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
人手ひとでわたさなければならなくなりました。
武ちゃんと昔話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人手ひとでわたさるゝ事さぞかし殘念ざんねんなるべし然らば我等其五百兩は用達ようだち申べしれども今度このたび金子きんす出來でき次第しだい百兩にても五十兩にても御返濟ごへんさいなされよ利分は取り申さず金子相濟あひすみ次第に證文は返却へんきやく致すべけれどもまづ證文しようもんあづかおき申べし其地面人手ひとでわたさるゝが氣の毒にぞんずる故なりお常殿にも此話このはなし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
父の一昨年おとゝしうせたる時も、母の去年うせたる時も、心からの介抱にるも帯を解き給はず、き入るとては背をで、がへるとては抱起だきおこしつ、三月みつきにあまる看病を人手ひとでにかけじとおぼめしうれしさ
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
月給げつきうの八ゑんはまだ昇給しようきう沙汰さたし、此上このうへ小兒ちいさいうまれて物入ものいりがかさんで、人手ひとでるやうにつたら、おまへがたがなんとする、美尾みを虚弱きよじやく身體からだなり、良人おつとたすけて手内職てないしよくといふも六ツかしかるべく
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あはれみてやめぐむともなきめぐみによくして鹽噌えんそ苦勞くらうらずといふなるそはまた何處いづこれなるにやさてあやしむべくたつとむべき此慈善家このじぜんか姓氏せいしといはず心情しんじやうといはず義理ぎりしがらみさこそとるはひとりおたか乳母うばあるのみしのび/\のみつぎのものそれからそれと人手ひとで
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)